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映画『カーズ/クロスロード』ブライアン・フィー監督にインタビュー:「私たちが『大きな子ども』みたいなもの」

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ディズニー/ピクサーの『カーズ』シリーズは、彗星(稲妻?)のごとく現れたレーシングカーのルーキーであるライトニング・マックィーンがさまざまな出会いを通じてアスリートとして成長していく物語です。なにやらシリアスな雰囲気を醸しだしている最新作『カーズ/クロスロード』ですが、自身のアスリート人生の岐路に直面するマックィーンの心の動きが描かれたストーリーとなっています。

今回、本作が初監督作品となるブライアン・フィー監督にお話を聞いてきました。彼は過去にストーリーボード・アーティストとして、『カーズ』や『レミーのおいしいレストラン』の製作にも参加しています。『カーズ/クロスロード』に使われた最新技術や、作品に込められた監督のメッセージを語っていただきました!

ーー「最新技術の台頭」は本作の大きなテーマでしたが、現実の世界でも技術は絶えず進化しています。このことを監督はどう捉えていますか?

ブライアン・フィー(以下フィー):新しい技術というのは常に若い世代がエキスパートなんですね。たとえば以前、私が父親にビデオデッキの使い方を教えていましたし、今は8歳の娘が私に携帯の使い方を教えてくれます。作品には、こういった実体験が活かされています。

ーー劇中ではマックィーンのデザインが何度も変わっていますが、それでもマックィーンらしさが失われていないのはどうしてでしょうか?

フィー:車体の形は変わっていません。だから、あくまでペイントや色などグラフィックデザインが変わっても、マックィーンの顔つきは保たれているんです。ボディのサイドの部分には多少の変更はありますが、目と形が同じであれば、どこから見ても同じに見えます。

マックィーンの表情や仕草は、オリジナル版で彼の声を演じるオーウェン・ウィルソンがアフレコしている映像を参考にしています。オーウェンの動きがキャラクター形成の一部に反映されているんです。

ーーピクサー作品は毎回新たな技術を使ったエフェクトがあることで有名ですが、今回は泥が精巧に表現されているとのことでした。ほかにも海や池など、水の描写もありましたが、泥や液体をCGで表現することは難しいのでしょうか?

フィー:本作で最も困難だったことが「泥」です。水に関しては、他の作品でもやってきているので「どうやってやるんだろう?」と試みる必要はありませんでした。波の表現はちょっと時間がかかりましたが、難しいことではなかったですね。

泥の場合、7分間のシーンで車体に泥が被ったり、泥のなかで車が動いたり、またウェットなものと乾いたもの、さらにその中間の状態を表現しなければなりませんでした。効果(エフェクト)部門がかなり努力をしていましたね。

ーー新しいキャラクターがたくさん登場していましたが、彼らはどのように生まれているのでしょうか?

フィー:新しいキャラクターはすべて、私たちが伝えたいストーリーに合わせて生まれます。今回登場する彼らも、マックィーンの置かれている状況を支えることを主眼に考案されています。時として「こういうキャラクターも登場させよう」と試みるんですが、ストーリーラインの変化によってボツになることもあります。

たとえばミス・フリッター。錆びついたスクールバスのキャラクターで、マックィーンが偶然潜り込んでしまった野良ダービーのボス的存在です。無法地帯のようなぬかるんだコースでの競争は、レーシングカーにとって最悪な状況であるいっぽう、参加している車たちはこのダービーを楽しんでいます。このシーンで私たちが伝えたかったのは「誰かにとっては恐ろしい状況かもしれないが、ほかの誰かからすればとても良い時間である」ということなんです。

ーー指導者の存在が重要なキャラクターの要素となっていましたが、これまでの『カーズ』シリーズを監督し、本作では製作総指揮を務めたジョン・ラセターさんは監督にとってどんな存在でしょうか?

フィー:ジョン・ラセターは自分の人生のなかでも大切なメンターの一人です。彼がいなかったら今の自分はありませんし、ピクサーに入社してからずっと彼を見ていました。彼の生き方や人との接し方、優れた物語の伝え方はとても素晴らしく、まわりにもインスピレーションを与えつづけています。ジョン・ラセターを見ることは、自分にとって人生のレッスンを受けているようですね。

映画『カーズ/クロスロード』ブライアン・フィー監督にインタビュー:「私たちが『大きな子ども』みたいなもの」

本作で自分が監督になるのは、思っても計画してもいないことでした。だから製作中も密接に彼とやり取りをしていましたね。キャラクター設定からストーリーにいたるまで、あらゆる部分でジョンの意見を聞きたいという思いもありました。

彼は私にいろいろな経験をするチャンスをくれます。時として自分が自分を信じられなくても、ジョンが信じてくれていたこともありましたね。

ーー大人向けという声もある本作ですが、作品を通してどんなメッセージを伝えたいでしょうか?

フィー:前向きでポジティブなメッセージを伝えたいと思っています。ただ、私たちは「子どもたちだけ」というわけではなく、老若男女に伝わるメッセージを目指しています。

本作のクルーズ・ラミレスというキャラクターは、私の娘たちを通して感じたことが反映されています。娘たちが言ったことをクルーズのセリフにしたり、彼女たちが新しいことに挑戦するときに恐れを抱くようにクルーズも似たような葛藤を抱えているんです。

クルーズが学ばなければならないことは、自信を持つことや夢を追い求めることで、誰にでも共感していただけるものだと思っています。

ピクサーは、自分たちが好きなものや感動することを作っています。そういった点では私たちが「大きな子ども」みたいなものですね。

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『カーズ/クロスロード』は本国アメリカでは「大人向け」だといわれていますが、監督の「大きな子ども」という言葉はとっても胸に響くものでした。子どもの頃『トイ・ストーリー』や『バグズ・ライフ』を観て育った筆者も、ピクサー作品からのメッセージを受け取ったまま年を重ねた大きな子どもなのかもしれません。じゃあ大人って一体なんなんだろう? と、ちょっと哲学的な気持ちにさせられます。

また、ライトニング・マックィーンがクラッシュしている予告編が印象的ですが、彼が人生の岐路に立つといったストーリーだけでなく、遊び心のある細かな描写にも注目です。まるで現実のような景色や迫力のレースシーンも映画を楽しめる要素となっていました。もちろん、ピザ・プラネットのマークが登場するシーンも!

子どもも大人も楽しめる『カーズ/クロスロード』は7月15日(土)より全国ロードショーです。

Image: (C)2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.Source: Disney, YouTube(1・2)

(豊田圭美)