新型コロナの感染の第6波。県内ではまだ収束の見通しが立っていないが、コロナ禍の逆境を乗り越えようと、様々な分野で新たな取り組みや従来のやり方を見直す動きが見られる。「コロナ、変わる、暮らし」と題して、ピンチをチャンスに変える取り組みをシリーズで紹介する。1回目は飲食業界、サービスの提供方法の見直しや接客方法を変えることで活路を見出だそうとしている店を取材した。 敦賀市内のフレンチレストラン「ル・サンオンズ」。フレンチを豊富なワインとともに気軽に楽しめる人気店だ。南シェフ:「12月はまあまあ来客やお客の予約がありました。このままコロナが終息を迎えて、普段というか今まで通りの営業ができるかなと、」しかし、年が明けてすぐに新型コロナの第6波に見舞われた。南シェフ:「レストランに来てくれるお客さんの数は減った。年末までの動きとは?ガラッと変わった感じ。」 こうした中、敦賀市は県が感染拡大警報を出したタイミングで2021年に実施した飲食店の応援企画を再び実施することを決めた。それが「おうちでお店ごはん」。 市内の飲食店を対象に、テイクアウト用のメニューを準備してもらい、その金額の3割を市が補助する。例えば、5000円分のメニューならば、客は3500円で購入することができる。2021年は7月から4カ月間実施した。敦賀市役所小畑さん:「前回開催したときには9割の事業者から効果があったとの回答を得られた。新型コロナ急拡大で一気に状況が変わった。すぐに対策を打たないと」 敦賀市は、敦賀商工会議所とともに1週間で準備を整え、1月21日から2回目の「おうちでお店ごはん」をスタート。ル・サンオンズも企画復活の知らせを受けすぐに参加を決めた。南シェフ:「店に来たことない人も気軽に注文できるっていう企画なので、びっくりするぐらいの注文が入った。来客が少ない分、その部分で売り上げがあると、飲食店としては助かるので、ありがたい思い。」 プロの料理は「店で味わうもの」という発想からの脱却。テイクアウトメニューの充実で、料理人の原点にも気づかされた。南シェフ:「オードブル作れるおかげで毎日料理も作れるので、それは作りてとしてありがたい。ゴールの見えない現状なので、オードブルのテイクアウトだったり、出し合ったアイディアで乗り切るしかない、がんばっていかなきゃ。」3月中旬まで続くこの企画は、現在、敦賀市内の43店舗が参加している。 一方こちらは若狭町にある「焼肉吟ちゃん」。代表の中西佑介さんは独自に開発したシステムを導入し、接客の仕方を変えた。厨房に置かれたスマートフォンに客の顔が映り、厨房から動かずに注文を取れる。中西さん:「非接触で接客するというシステム。各席にテレビ電話を設置して、それで店員側から電話をかけるというシンプルにその操作だけ。」 このシステムを入れたことで客のもとにオーダーを聞きに行くことがなくなり、接触の回数を大幅に減らすことができている。ただ、この接客システムはコロナ禍前に直面したある問題がきっかけで考案したものだった。中西さん:「もともとはコロナ禍とは関係なく、慢性的な人員不足で、一人で対応しなければいけない時間帯があったり、それに対してなにか出来ないかということで自分で考えて。ちょうどそれを開発した後にコロナ禍が来て。」お客:「非接触型のシステムがあるので、タブレットじゃなくて、店員さんの顔を見て注文できるので非常に安心。温かみも感じる」中西さん:「自分の中では元気よく『いらっしゃいませ』っていうのが昔からの飲食店の在り方かなと思っていたので、ぜひその接客を残したい。」中西さんはコロナ禍の経験が精神的な強さにつながったと話す。中西さん:「何が起こっても、こうなったからダメだみたいなとか、言い訳のような諦めは考えないで、どういたらできるのかという、できる理由を常に考えながら、今後も前向きに物事を考えて仕事に取り組んでいきたい。」 新型コロナの波に翻弄される飲食業界。苦境を乗り越えるさまざまなアイデアは現状を受け入れる強さの裏返しと言えそうだ