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サウジアラビア皇太子、アトランティック誌に改革、国際関係、経済を語る|ARAB NEWS サウジアラビア皇太子、アトランティック誌に改革、国際関係、経済を語る – ARAB NEWS

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アラブニュース

リヤド:サウジアラビアは、両国にとってより輝かしい未来を作るためにイランと交渉を続けると、同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子が3日に公開されたインタビューの中で述べた。

両国は「永遠の隣国」であると皇太子は述べた。「我々は彼らを追い払うことはできないし、彼らも我々を追い払うことはできない。従って、我々双方にとっては、上手く対処し、我々が共存できる方法を探した方が良い」

ムハンマド皇太子は、イラン政府との間では既に4度の会談が行われており、会談はさらに続くと述べた。「上手く行けば、両国にとって良い地点に到達でき、我が国とイランにとってより輝かしい未来を作ることができるだろう」

米国の雑誌ザ・アトランティックとの長いインタビューの中で、皇太子はサウジアラビアと米国の関係、サウジの国家の基盤としてのイスラム教の極めて重要な役割や、サウジが宗教過激主義を拒絶していること、サウジアラビアの社会発展と経済成長の計画について議論した。

ムハンマド皇太子は、サウジアラビアは米国と「長い歴史的な関係」を築き、その関係を強化することを目指すと述べた。「政治的な利益、経済的な利益、安全保障上の利益、防衛上の利益、貿易上の利益など、我々は多くの利益を得ている。これは大きい」

しかし皇太子は、サウジの内政に対する干渉は拒絶し、サウジアラビアに圧力をかけようとするのは逆効果だと主張した。

「圧力は効かない」と、皇太子は述べた。「歴史を通じて、圧力が我々に効いたことは一度もない。正しい思想、正しい考え方があるのなら、それを実行し続ければいい。それが正しければ、人々は付いてくるだろう。間違っていれば、人々は自分自身の考え方に従うだろう。そして、それは受け入れなければならない」

「我々はアメリカの文化、考え方、アメリカのあらゆるものを尊重する。なぜなら、それはあなた方次第だからだ。我々は、同じように扱われることを望んでいる。我々はあなた方が信じている多くのことに賛同しないが、それでも我々はそれを尊重する」

「我々があなた方に賛成するかしないかに関わらず、我々はアメリカでは、あなた方に説教する権利はない。逆も然りだ」

サウジアラビアの文化や価値観に対するイスラム教の教義の重要性を振り返りながら、ムハンマド皇太子は、過激派が自分たちの悪意のある利益を追求するために、イスラム教を乗っ取り、歪めてきたのであり、サウジはそのプロセスを逆行していると述べた。

しかし、皇太子は「私は『穏健イスラム』という言葉は使わない。この言葉は、過激派やテロリストを喜ばせるからだ。これは、我々サウジアラビアや他のイスラム諸国の人々が、イスラムを新しいものに変えようとしているということを示唆するものだが、それは事実ではない」

「我々はイスラムの本当の教え、預言者や正しく導かれた4人のカリフの生き方、つまり開かれた平和的社会に回帰しているのだ。イスラム教に基づくサウジアラビアの魂、や、部族的・都市的な我々の文化が、国家、国民、地域、全世界に資することとなり、我々を経済成長へと導くようにするために、我々はルーツや、純粋なイスラムに回帰しているのだ」

その結果、サウジアラビアは「世界で最も急速に成長している国の1つ」になっていると、皇太子は述べた。皇太子は次のように語った。「来年、経済全体は7%近く成長する。サウジは小国ではなく、急速に成長するG20参加国だ。では、今、潜在性は世界のどこにあるだろうか?それはサウジアラビアにある」

ムハンマド皇太子は、このような発展は、サウジアラビアの基本的な価値観を尊重しながら、サウジ独自のやり方で達成されると述べた。「我々はドバイのようにも、アメリカのようにもなろうとしていない」と皇太子は語った。「我々は、自分たちが手にしているもの、経済資産に基づき、また、サウジアラビア国民の潜在性やサウジアラビア文化、我々の背景を利用しながら、発展しようとしているのだ」

「今、サウジアラビアではそれを目で見ることができる。我々は多くのことを実行し、やるべきこともまだ少し残っている。そして、それらの実現のために、我々は取り組むのだ」

インタビューの全編文字起こしは以下の通り:

アトランティック

私は2019年から何度かここを訪れています。毎回少しずつ変わっていて、より近代的で、より先進的になっています。2030年が近づき、ドバイのように、アメリカのようにさえなってきています。サウジアラビアはサウジアラビアでなくなり、世界の他の国に似てくると思いますか?

皇太子

私たちは、ドバイのようになろうとか、アメリカのようになろうとは思っていません。私たちが持っているもの、経済的な資産、サウジアラビア人の潜在能力の活用、サウジアラビアの文化、私たちのバックグラウンドに基づいて、このように進化しようとしているのです。

私たちは、世界に何か新しいものを加えたいと考えています。私たちのプロジェクトの多くはユニーク(独自のもの)で、それはサウジアラビア的なものです。例えば、アル·ウラーは、サウジアラビア独自のものです。このようなモデルは他にはありません。また、ディルイーヤのプロジェクトは世界最大級の文化プロジェクトですが、これもユニークです。これはナジュドをテーマとした文化遺産プロジェクトです。例えば、ジェッダの旧市街とその周辺の開発は、ヒジャーズの伝統に基づいたもので、これもユニークです。それがサウジアラビアなのです。また、NEOMや、NEOMの主要都市であるザ·ラインもユニークで、サウジアラビアが作り上げたものです。他の国のコピーではありません。誰も作ったことのない解決策を生み出し、進化しているのです。例えば、世界最大級のエンターテインメント·文化·スポーツプロジェクトであるキディヤ·リヤドは、約300平方キロメートルと、小さな国の面積よりも大きな面積を誇ります。テーマパーク、文化、スポーツの要素、不動産などの巨大プロジェクトが、オーランドをはじめ、世界のどこにもない方法でシンクロナイズされているのです。ですから、私たちは真似をするのではなく、革新的であろうとするのです。公的投資基金(PIF)にある資本、政府予算にある資本を、我々の文化やサウジのイノベーションに基づいた、革新的な方法で使おうとしているのです。

アトランティック

ただ……

皇太子

例を挙げてください!似たようなプロジェクトはありますか?何もありません。

アトランティック

サウジアラビアの、イスラム的な部分が弱くなるところまで近代化できるのでしょうか?

皇太子

世界中のどの国も、一連の見解や信念の上に成り立っています。例えば、アメリカは、民主主義、自由、自由経済、等々といった見解や信念を基盤としています。しかし、すべての民主主義国家は正しいのでしょうか?すべての民主主義国家はうまく機能しているのでしょうか?間違いなく、そうではありません。

私たちの国は、イスラム教、部族文化、アラブ文化、サウジアラビアの文化や信念に基づいた、一連の見解や信念を基盤としています。それを捨てされば、国は崩壊します。

問題は、サウジアラビアを間違った道ではなく、正しい発展と近代化の道に導くにはどうしたらいいのか、ということです。アメリカも同じ問題に向き合っています。民主主義、自由市場、自由をどうすれば正しい道に導くことができるのか。なぜ問題なのか?それは、間違った方向に進んでしまう可能性があるからです。ですから、私たちはどのような信念も軽んじてはいません。それが私たちの魂なのですから。聖モスクはサウジアラビアにあり、誰もそれを取り除くことはできません。私たちには聖モスクに対する責任が永遠にあり、サウジの人々のために、地域のために、そして全世界のために、私たちの国を正しい道に導きたいと考えます。平和と共存の信念に基づき、世界に価値を提供するために。

アトランティック

しかし、現在の穏健なイスラム教の布教方法は、1983年にあなたのような立場の人と会話していた場合とは全く異なっていることにも同意していただけると思います。

皇太子

私は「穏健なイスラム教」という言葉は使いません。この言葉は、過激派やテロリストを喜ばせるからです。

アトランティック

彼らはそれを侮辱だと考えているのです。

皇太子

私たちがその言葉を使えば、彼らにとっては朗報です。もし私たちが「穏健なイスラム」と言えば、サウジアラビアや他のイスラム諸国では、私たちがイスラムを何か新しいものに変えているというイメージが出来上がります。それは真実ではありません。

私たちはイスラムの本当の教え、つまり預言者や4人の正しい指導者であるカリフの生き方、つまりオープンで平和な社会に戻ろうとしているのです。彼らは支配地域においても、キリスト教徒やユダヤ教徒のルールを尊重しました。彼らは、あらゆる文化、あらゆる宗教を尊重するよう私たちに教えてくれました。預言者と4人のカリフの教えは、完璧なものでした。私たちは根本に、本物に戻ろうとしているのです。しかし、過激派が自分たちの利益のために私たちの宗教を乗っ取って新しい別のものに変えてしまったのです。

彼らは人々に自分たちのやり方でイスラム教を捉えさせようとしているのです。そして問題は、彼らに反論する者も、真剣に戦う者もいなかったということです。そのため、彼らはあらゆる過激な意見を広める機会を得て、スンニ派とシーア派の両方の世界で、最も過激なテロリスト集団を生み出すに至ったのです。

アトランティック

この地域の宗教団体の中には、この過激主義は1960年代と1970年代のムスリム同胞団の影響によるところが大きいと言う人たちもいます。しかし、サウジアラビアの影響が大きかったことも確かなようです。サウジアラビアの保守主義というのは、実際に存在するのです。

アトランティック

それは、ワッハーブ派です。

アトランティック

ですから、この外部のムスリム同胞団の影響を排除するというなら、それはそれで一つの方法です。しかし、サウジアラビアの構成要素である過激派にはどう対処しているのでしょうか?

皇太子

ムスリム同胞団、つまりイフワーンは、このすべての過激派を生み出す上で大きな役割を果たしました。彼らは、他の人々を過激派へと導く橋渡し役だったのです。彼らと話すと、彼らは過激派には見えません。しかし、あなたを過激派に導くのです。オサマ·ビンラディンはムスリム同胞団のメンバーでした。アルザワヒリはかつてムスリム同胞団のメンバーで、ダーイシュのリーダーもかつてムスリム同胞団のメンバーでした。つまり、同胞団は経路なのです。彼らは過去数十年間、過激派グループの誕生に強い影響を与えてきました。しかし、すべての原因がムスリム同胞団というわけではありません。イスラム世界だけでなく、アメリカでも、たとえばイラク侵攻など、過激派がメッセージを広め、信者を集めるきっかけとなったさまざまな事柄や出来事が混在しているのです。また、ムスリム同胞団の過激派ではなく、サウジアラビアの一部の過激派が、特に1979年のイラン革命やメッカの聖モスクのハイジャック以降、この方面で役割を果たしたことも事実です。

そしてワッハーブ派について。ムハンマド·イブン·アブドゥルワッハーブは預言者ではなく、天使でもありません。彼は、最初のサウジアラビア国家に生きた多くの学者と同じように、多くの政治指導者や軍事指導者の中の、ただの学者でした。当時のアラビア半島の問題は、イブン·アブドゥルワッハーブの弟子たちだけが読み書きを知っていて、歴史は彼らの視点で書かれていたことです。イブン·アブドゥルワッハーブの文章は、多くの過激派により自分たちの目的のために利用されてきた。しかし、もしイブン·アブドゥルワッハーブやビン·バズなどが今生きていたら、彼ら自身がこうした過激な思想やテロリスト集団と戦う最初の人物の一人になったことでしょう。ダーイシュは、生きているサウジアラビアの宗教家を手本にすることはない、ということです。彼らが死ぬと、彼らは彼らの言葉を使い始め、文脈を無視して彼らの見解をねじ曲げるのです。

イブン·アブドゥルワッハーブはサウジアラビアではありません。サウジアラビアにはスンニ派とシーア派があり、スンニ派には4つの派があります。シーア派にはさまざまな派があり、すべての派が宗教委員会で代表されています。今日、サウジアラビアでは、ある宗派の見解を押し付けて、それを唯一の宗教の見解とすることはできません。特に80年代、90年代、2000年代初頭の出来事によって、我々の歴史の一部でそのようなことは起こったのかもしれません。しかし、現在、私たちは正しい軌道に戻りつつあります。イスラム教に基づくサウジアラビアの魂が、部族的であれ、都市的であれ、国家、国民、地域、全世界に貢献し、経済成長につながることを確認するために、私たちは原点に、つまり純粋なイスラム教に戻っているのです。そして、それが過去5年間に起こったことなのです。もしかしたら、2016年にインタビューをしていたら、私の思い込みだ、これはサウジアラビアの皇太子の分析に過ぎない、と言われるかもしれません。でも、私たちはやりました。今、サウジアラビアで、あなたの目で見ているのです。来て、確認してください、6、7年前のサウジアラビアの映像を見てください。私たちは多くのことをやりとげましたし、まだいくつかやらなければならないことがあります。そして、それらを実現するために、私たちは努力するつもりです。

アトランティック

ワシントンで、私たちが初めて会ったとき、後見制度と変化のスピードについて話していたのですが、あなたは携帯電話で、結婚式で銃を乱射する男たちのビデオを私に見せてくれました。覚えているかどうかわかりませんが。

皇太子

覚えています。

アトランティック

そしてあなたは、「見てください、正しい速度で進まなければならないのです」と言いました。速すぎるのはだめだと。なぜなら、この人たちは速すぎる速度を求めるからだ、と。そこで質問なのですが、3年経った今、あなたは速く進みすぎていると感じますか?部族や宗教指導者から大きな反対を受けているように感じますか?

皇太子:

その時は、サウジアラビアの民主化について質問されたので、そのビデオをお見せしたのだと思います。

アトランティック

そのとおりです。

皇太子:

サウジアラビアは君主制であり、そのモデルに基づき、設立されました。そして、君主制の下には部族の長や都市の指導者のような、部族と都市の君主制の複雑な構造がある、と申し上げました。そこで、サウジアラビアの半部族的な君主制がどのようなものかを、例として挙げようとしたのです。

アトランティック

急ぎすぎはよくないということですね。

皇太子

そういうことではありません。私は、サウジアラビアを君主制から他のタイプのシステムに変えることはできないと言っているのです。サウジアラビアは300年もの間、君主制を基盤としてきました。この複雑な君主制の構造、千の部族と都市のシステムは、過去に人々がどのように暮らしていたかの一部であり、それは今日のサウジアラビアと君主制の継続の一部でもあります。サウジアラビアの王族には、アール·サウード家の王族が5000人以上存在します。このシステムを変えることは、アール·サウードを裏切り、サウジアラビアの何千もの部族指導者や半部族指導者を裏切るようなものです。これらの指導者たちは皆、サウジアラビアの改革に貢献しているのです。だから、私は彼らが変化を遅らせている人たちだとは考えていません。彼らは、私がより多くのことを行うのを助けてくれる人たちなのです。

アトランティック

前回、あなたはサウジアラビアの人々の声に耳を傾け、変化に対する彼らの意欲や関心事を探っているという話をしました。ということは、まだ完全にはゴールを決めていないということでしょうか。やりたいことをすべてやり遂げたわけではないのですね。そこまで、あとどれくらいなのでしょうか?また、ゴール地点は、あなたが計画したものとどれくらい違っているのでしょうか?

皇太子

最終ゴールは見えていると言ったら、私はひどい指導者ということになりますね。最終ゴールはまだまだ先です。今はただひたすらそれに向かって、より速く走り続けるのみです。ゴールを次々に設定し、ひたすら走り続けるのです。我々の目標はどの国よりも速く、どの国よりも多くのことを達成させることです。

アトランティック誌

しかし、限界があるのではありませんか?米国で合法的にできることと全く同じことをこの国で行うことができますか?イスラム教国であるために、なんらかの地点で立ち止まらなければならないのではないですか?

皇太子

社会的にという意味ですか?

アトランティック誌 はい、それも一つです。

皇太子

イスラム教では教徒たちに対して禁じられている行為があり、神はそうした行為に対して具体的に制裁を示しています。また、神が制裁を特定していない行為もあり、そうした行為は人と神の間で判断されます。

しかし、非イスラム教徒であれば、イスラム教の教えは適用されません。サウジアラビアで居住または旅行する非イスラム教徒の人は、国の法律に準拠する限り、自身の信ずるところに従ってどんなことでも好きなように行う権利があります。

それが預言者ムハンマドと正統カリフ4代の時代に行われていたことでした。非イスラム教徒に対しては、市民であれ一時滞在者であれ、社会規範を適用することはありませんでした。

アトランティック誌

イスラム法について、とうとうと語られるあなたのお話しぶりは、サウジアラビアの指導者の中でも実に稀なことです。あなたが現在就いていらっしゃる地位はごく近代になってできたものですが、イスラム教の学者の間でもあまり例がありませんね。今後は、サウジアラビアの指導者たちがイスラム法について個人的に大きな関心を寄せることになると思ってよろしいですか?

皇太子

イスラム法では、イスラム社会の長はwali al-`amrと呼ばれる統治者であって、最終的な統治はムフティー(法官)が行うことではありません。最終的なファトワは国王が定めます。ですから、ムフティーとファトワ評議会は国王へのアドバイザーのような存在であり、国王へ進言をする役割を担っています。つまり、イスラム教の教えでは、統治者が最終的なファトワを定め、契約を定めることになっており、最終決定はサウジアラビア国王が行うということになります。ただし議論することもできます。その場合は、自分の考えを説明し、証拠を提示し、イスラム教の法学を根拠とし、預言者とカリフの時代に準拠し、コーランを調べ、ハディースについて議論しながら自分の主張を訴えます。そのあとは人々にその考えを受け入れてもらい、信じてもらわなければなりません。その上で国王が決定を下します。こうした全てのプロセスを経ずに、国王の権力を行使して決定を行うなら、国中の国民が大きな衝撃を受けることになるでしょう。

アトランティック誌

あなたがmutawatirハディースの重要性についてお話しされているのを聞いたことがあります。例えば、イスラム法に関するこうしたレベルの議論は、皇太子や国王から普段聞けるような内容ではありません。

皇太子

それがイスラム教徒の世界にみられる分断の主な原因です。何千何万というハディースが存在します。そしてその大多数には根拠がなく、多くの人が自分の行動を正当化する手段として利用しているのです。例えば、カイーダ/ ISISの信奉者らは非常に説得力の弱い、本当のハディースとは言えないようなハディースを使っており、それを彼らのイデオロギーとして誇大広告しています。

簡単に言うと、神とコーランは預言者ムハンマドの教えに従うように命じているのです。預言者ムハンマドの時代、人々はコーランを写経し、さらに預言者ムハンマドの教えを書き記していました。そこで預言者ムハンマドは、最も重要な基盤が常にコーランであるようにするため、彼の教えは書き写さないように命じたのです。ですから預言者ムハンマドの教えをよりどころとする際は十分慎重に行う必要があります。それらは3つのカテゴリーに分類されます。

一つはmutawatir というものです。4、5人の人々が預言者ムハンマドから直接それを聞き、その人々から2、3人の人が話を伝え聞き、その2、3人の人から他の2、3人が伝え聞いたものを文書化したものです。それは大部分が極めて強いものであり、我々はそれに従わなくてはなりません。数としては少なく、100ほどのハディースが含まれます。

二つ目のカテゴリーは一人ハディースと呼ばれるものです。一人の人が預言者ムハンマドから直接教えを聞き、別の一人がその人から伝え聞き、順次一人ずつの人に伝わりながら最終的にある人が文書化するに至ったものです。もしくは2、3人の人が預言者ムハンマドから直接それを聞き、その2、3人の人からある一人に伝えられた場合もあります。つまりハディースの伝承経路に一人の人が介在する場合に一人ハディースと呼び、ahadと言われています。内容が本当か、コーランの教えに則っているか、mutawatirの教えに則っているか、さらに人々の利益にかなうものかどうか、よく調べる必要があります。その結果によって、使う場合もあれば使わない場合もあります。

三つ目はkhabar と呼ばれます。誰かが預言者ムハンマドから直接聞き、その後だんだんに伝承されていく中で不明の人間が含まれます。これらには何千何万というハディースが含まれており、使うべきではありませんが、例外の場合があります。二つの選択肢があって、両方とも非常に良いものである場合です。その場合には、人々の利益にかなうようならkhabar ハディースを使うことができます。

ハディースの用い方をイスラム教徒たちに教育するために、我々はこのようにしてハディースを特定し、出版しています。このことによって非常に大きな違いが生まれるはずです。時間がかかります。現在最終段階に入っており、おそらくあと2年もすれば世の中に出せると思っています。これこそが正しい方法によるハディースの文書化です。人々が異なる書物を読む時は固定観念を持たず、ハディースの伝承について細かく調べたり、それぞれの違いを比べたりするような知恵や知識も持たずに読むため、これは証明済みだと言えばそれで充分なのです。

アトランティック誌

では質問ですが、このように多大な知識をもってそれを語ることができるのであれば、なぜムフティーが必要なのですか?ご自身だけで十分だと思いますが。

皇太子

ムフティーの仕事は日々の生活の中における疑問や利害に関する質問を抱える人々に答えを提供することです。例えば誰かがラマダン中に食事をしたが、それに対してどう対処すべきか、その人は罪を犯したことになるのか、といったことへの答えを求めてだれかに電話したくなりますね。でもそうしたことへの回答は規制される必要があります。誰であっても、「どうすればいいか知っているよ」と言ってその質問に適当に答えることは許されません。それは規制されなければならないことであり、回答する人間は政府から認証を受けている必要があります。というわけで、IFTA理事会とその分野に従事するすべての人々は、「人々のニーズに関する疑問に答えること」を目標としています。

アトランティック誌

以前おっしゃっていたことに戻ってもよろしいですか?預言者ムハンマドご自身は非常に寛容であり、罪についても見て見ぬ振りをなさるというお話をされましたね。人の罪を裁きはすべて神次第だと。しかしサウジアラビアは極めて頻繁に死刑を執行し、そのことについて大きく非難されています。また、体の切断やイスラム法に基づくその他の刑罰を科しています。あなたとしては人々の罪に対するこれらの身体的刑罰を排除したいというお考えですか?

皇太子

死刑についてはある一つのカテゴリーを除き、廃止しました。このカテゴリーについてはコーランに記されており、どうすることもできません。コーランに明記されている以上、我々が何かしたくてもできないのです。つまり、誰かが人を殺した場合、殺された人の家族たちは裁判所に訴え、加害者を許さないのであれば死刑を求刑する権利を有します。あるいは、誰かが多くの人々の命を脅かした場合も死刑によって罰せられます。これはコーランに記されている教えです。好き嫌いにかかわらず、それを変える力は私にはありません。

アトランティック誌

しかし、許すことをもっと促すような気風を作り出すことは可能ですよね。

皇太子

それはやっています。あなたにお時間さえあれば、知事たち全員のところへあなたをお連れしてもいいですし、行政本部へ行けば、その問題に取り組んでいる部署もあります。死刑が存在するにしても、安易に執行するわけではありません。6ヶ月から1年ほどの時間をかけて、被害者の家族が冷静さを取り戻し、彼らにもう一度よく考える時間をとらせています。そうした調停によって執行が中止されるケースもかなりの割合にのぼっています。そういった働きかけを通して我々も最大の努力を行っているのです。むち打ち刑についてはサウジアラビアで全面的に廃止されつつあります。現在廃止に向けて取り組んでいる唯一の案件は、「法がなければ刑罰もない」ということを徹底させることです。裁判官の一存で決まるような刑がいくつか存在するため、このサウジアラビアでは法律に基づかなければ刑罰を定めることはできないということを徹底させるように努力しています。現在この問題について協議を進めており、2、3年後には実現させようとしています。

アトランティック誌

関連する話ですが、ご存知のようにCIAは、状況調査と確信に基づき、カショギ氏の殺害または拘束をあなたが命じたと述べています。その結論に対してどうお考えですか?

皇太子

そうですね、第一に、誰であろうと人が意に反して殺害されるのを見るのは辛いものです。ですから、当然死刑に値するような人であっても、法制度に則って処遇され、自己弁護などをする権利を持つのです。あの事件は悲惨なものでした。サウジ市民に対して、あるいは世界中の誰に対してであれ、あのようなことが起こらなければよかったと思っています。制度上の大きな過失でした。その制度を正し、二度とあのような事件が起こらないようにするために全力を尽くしました。また、公正な政府としてとるべき行動をとり、関与した人間たちを調査へ差し出して裁判にかけました。その後、裁判所は彼らに異なる刑罰を科し、彼らは現在その刑に服しています。そのような時期に米国はイラクやアフガニスタンやグアンタナモで過ちを犯しました。あなた方は適切な段階を踏んで対処したわけですが、私たちも同じです。

アトランティック誌

しかし、あなたは一切関与していないとおっしゃっていますよね。

皇太子

なぜ私が関与する必要があるのですか?(一切関与していないことは)明白です。

アトランティック誌

これは以前にもお話ししましたが、あなたはこの事件全体によって、それにまつわる物議全体によって、実に傷ついたとおっしゃいましたね。

皇太子

たしかに非常に傷つきました。「心情」的には私もサウジアラビアも傷つきました。

アトランティック誌

「心情」的に、ですか?

皇太子

我々は非難を受けました。怒りの感情は理解できます、とくにジャーナリストたちの間ではなおさらでしょう。彼らの思いに敬意を表します。しかし、我々にも感情があり、心の痛みがあるのです。我々は公正に扱われていないと感じています。私自身としては、人権法が自分には適用されなかったと感じています。世界人権宣言第11章に、有罪が証明されるまでは誰もが無罪であるとうたわれています。私にはその権利が与えられなかった。第11章に書かれている私の人権に基づいて私を処遇することをせずに、あなたがたはよく人権について私に話ができるものですね。理解に苦しみます。我々がこのように扱われていることを知って非常に辛いですよ。しかし、私にとって最大の疑問は、これです:あの年、全世界で約70名のジャーナリストが殺害されました。彼らの名前を挙げられますか?挙げられませんか?それはそれは、まことに有難うございます。これが本当に仲間のジャーナリストを思う心情なんですか?それともこれは我々や私に対する策略なんでしょうか?もしそれが本当に仲間のジャーナリストを思う心情なのであれば、あの年に殺害された70名のジャーナリストたちの名前を教えてくださいよ。

アトランティック誌

本件がなぜこれほどまでに注目を集めたとお考えですか?

皇太子

今日のサウジアラビアのプロジェクト、Vision 2030の失敗を願う人がたくさんいるからです。失敗を願いつつも、人々は関与できません。このプロジェクトが失敗に終わることはないでしょう。このプロジェクトを失敗させるような力を持つ人は世界のどこにもいません。5%ほど進捗を遅らせることならできるでしょう。それが最大限の妨害で、それ以上のことは誰にもできません。非難するようなことはしたくありませんが、正しい知識を持っていれば西側諸国の団体と中東の団体の間に繋がりを生み出せる一方で、私たちのプロジェクトの失敗を願う団体がいくつかあります。

アトランティック誌

カショジ氏自身もサウジアラビアの計画に対してムスリム同胞団としての主張で反論していたとお考えですか?

皇太子

カショジ氏に関してですが、私はサウジアラビア系の新聞でもアメリカ系の新聞でも、記事の全文を読んだことがありません。私は日々のニュース記事しか読みません。そして、地元メディア、地域メディア、もしくはグローバルメディアで重大なニュースがあればそれも見るようにしています。

アトランティック誌

つまり、あなたは彼を邪魔だと感じたことはないのですね?

彼に関する記事の全文を読んだことがありません。

アトランティック誌

このようなことが今後二度と起こらないと言い切れますか?つまり―

皇太子

このようなことが二度と起こらないようにするために、しっかりと統治を行い、適切なプロセスと手順を踏めるように、最善を尽くしています。私はそれを公約として掲げているのですが―

アトランティック誌

例えば、また別の団体が見つかった場合、あなたの支配力に関して私たちは心配するべきなのでしょうか。

皇太子

その必要はないことを願います。それに関して、私は最善を尽くしています。私たちが苦しんできたことはご存知のことでしょう。二度と同じことを繰り返したくありません。あれは大きな間違いでした。なので、また同じことが起こらないように願っています。私たちのシステムが完全に発達したものであり、同じ過ちが繰り返されないことを確かめる必要があります。

アトランティック誌

カショジ氏が殺害される数週間前に、私は1度彼に会いましたが、彼にこのように尋ねました。「真の目的は何ですか?サウド王家を倒すことですか?」と。彼の答えはこうでした。「いいえ違います。私は、サウド王家が永遠にサウジアラビアを統治するべきだと考えています」。そこで、彼が殺害された時、サウド王家の存続に賛成の彼が敵であるとみなされていたのであれば、同じように敵であると思われている人が他にもたくさんいるのではないかということに私は気づきました。この国には恐ろしさを感じさせる雰囲気があるように思います。

皇太子

私はそうは思いません。それが私たちのやり方であれば、カショジ氏はそのような人のリストの上位千人にも入らなかったでしょう。仮にもし私たちがそのような措置をとる場合、それは専門的なやり方で、リストの上位の人物に対して行っていたことでしょう。

そこで、なぜ殺害されたのがカショジ氏だったのか。それは本当に大きな過ちでした。また、私たちはそのような措置を講じていません。私たちは違法な措置をとることはありません。犯罪者や、サウジアラビアにとって危険な人物、サウジアラビア国内で罪を犯した人や、世界的に危険な人物に対しては、サウジアラビアの法律、国際法、そしてその他外国の法律に基づいて措置を講じます。過去にもそのように対処してきましたし、これからもそうしていきます。

アトランティック誌

何よりも、カショジ氏の殺害でアメリカ合衆国との関係性が悪化しました。あなたについて、ジョー・バイデン氏がまだ知らないことで、知っておいてほしいことはありますか?なぜなら、今回の件で—

皇太子

アトランティック誌

皇太子

私は気にしていません。

アトランティック誌

皇太子

サウジアラビア皇太子、アトランティック誌に改革、国際関係、経済を語る|ARAB NEWS サウジアラビア皇太子、アトランティック誌に改革、国際関係、経済を語る – ARAB NEWS

アメリカの利益について考えるのは彼です。

アトランティック誌

サウジアラビアにおけるアメリカの利益は何でしょうか?

皇太子

まず、私はアメリカ人ではありませんので、アメリカの利益について語る権利があるのかわかりません。でも、世界中のどの国にも、利益の主柱があると私は考えています。それは経済的利益と、政治および安全保障上の利益です。これらはどの国においても外交政策の主な基盤です。どのように自国の経済を活性化させようか。そしてそのように自国の安全を保証しようか。そして、自国が確実に安全で、確実に成長し、より多くの投資や取引を可能にするためにどのようにして経済や政治的結びつきを後押ししようか、といったことです。したがって、アメリカにとっての利益もそのようだろうと思います。

サウジアラビアはG20参加国です。5年前私たちの国の経済は、G20の中でほぼ最下位でした。現在、我が国はG20参加国の中で大体17位です。そして、私たちは2030年までに15位以上の地位まで登りたいと考えています。例えば、2021年に、私たちは5.9%のGDP成長を目指し、実際に2021年に5.6%の成長を遂げたと確信しています。これは間違いなく、世界的にも最も成長スピードの速い国の1つといえます。来年、経済全体でおよそ7%の成長が実現する予定です。サウジアラビアは小さな国ではなく、G20参加国の中でも急成長している国なのです。さて、現在世界で最も可能性のある国はどこでしょうか?サウジアラビアです。これを見逃しては、東側諸国の人々はとても喜んで—

アトランティック誌

東側諸国の人々とはだれのことですか?

皇太子

同時に、あなたは彼らを押し戻そうとしています。私はそれが理解できません。

アトランティック誌

「押し戻す」とはどういう意味ですか?

皇太子

言葉通り受け取ってください。

アトランティック誌

良く分かりませんが、続けましょう。いつになく、中国と良好な関係を築いているのでしょうか?

皇太子

私たちはアメリカ合衆国と長い歴史的な付き合いがあります。サウジアラビアはその関係を維持し、さらに強化していく方針です。サウジアラビアには政治的利益、経済的利益、安全保障上の利益、防衛上の利益、そして貿易上の利益など、多くの利益があります。それらは非常に大きなものです。そして、私たちにはこれら全てを後押しする大きな機会があります。また、多くの地域でこれらが下方修正される可能性も大いにあります。サウジアラビアに関しては、これらの利益を全ての地域で強化したいと考えています。

アメリカは国内事情に口を挟む権利はありません。これは私たちサウジアラビア人の問題で、このことに関しては誰も何もできません。アメリカが正しい社会的見解や価値観を強く持っているのなら、私たちに圧力をかけなくても勝利をつかむことができるでしょう。1つ例を挙げましょう。60から70年前、私たちが奴隷制度を廃止したのは圧力がかかったからではありません。外国からの良い影響を受けたからでした。サウジアラビア国民は海外で勉強するようになり、アメリカ、ヨーロッパ、その他の外国の企業がサウジアラビアに進出するようになりました。私たちはそれらの影響を強く受けました。私たちは奴隷制度が間違っているということに気づき、続けるべきではないと考え、時とともに奴隷制度は変化し廃止されました。

圧力をかけても効果はありません。歴史的にも、我が国に対して圧力が効力を発揮したことはありません。正しい発想と正しい考えをもっていれば、それを貫くべきです。それが正しいことなら人々がついてくるでしょう。それが間違っていれば、人々は自分の考え方に従うでしょう。そして、そのことを自分自身でも受け入れる必要があります。例えば、サウジアラビアでは、アメリカの文化や考え方をはじめ、アメリカの全てを尊重していますが、それはアメリカ人の自由だからです。私たちもアメリカから同じように扱っていただきたいと考えています。私たちはアメリカの考えの多くに反対の立場ですが、それでもその考え方を尊重します。

私たちがアメリカに賛成だろうが反対だろうが、私たちにはアメリカを諭す権利はありません。逆も然りです。私は、サウジアラビアが目指すところの社会基準に到達しているとは思っていません。それでも、私たちは自国の文化や信念に基づき、サウジアラビア国民が自信を持つ分野での発展を目指しています。

アトランティック誌

話を中国に戻しましょうか。

皇太子

サウジアラビアは急成長している国の1つです。我が国には世界10大基金のうちの2つがあります。世界的にも最も多額の現金準備額を誇る国の1つです。サウジアラビアは世界の石油の12%を供給できます。サウジアラビアはスエズ、ホルムズ、そしてバブ・エル・マンデブの3つの主な海峡の間に位置し、世界の貿易船の27%が通る紅海とアラビア湾に面しています。サウジアラビアのアメリカへの総出資額は8,000兆ドルです。中国に関しては、現在までに1,000兆ドルを下回る額しか出資していません。しかし、中国は急成長を遂げているのがうかがえます。アメリカの企業はサウジアラビアに大きく着目しています。サウジアラビアにはサウジアラビア系のアメリカ人も含め、30万人以上のアメリカ人が居住しており、その数は日々増えています。このことからも利益は明確です。サウジアラビアで成功するのも、失敗に終わるのもアメリカ次第です。

アトランティック誌

しかし、サウジアラビアの国内事情に関してアメリカ合衆国が介入できないことを認めると―

皇太子

実際に、私たちの信念に対して圧力を加えても、私たちは一層反発するだけです。

アトランティック誌

しかし、アメリカは、同盟国がアメリカの思想や利益と同様の政策を遂行しているか否かに従って、その同盟国が安全で長期的に同盟を組める国であるかを判断しています。したがって、政治自由化と関連しない急激な経済成長や、政治自由化に反発する動きと関連した経済成長が見受けられる場合、私たちはそれを中国やロシアと同様のものとみなさざるを得ないでしょう。そうではありませんか?

皇太子

それは違います。例えば、サウジアラビアにおいて、社会発展は後退しているか前進しているか、どちらだと思いますか?過去5年で何が起きたか、現在何が起こっているか、そして来年何が起こるか考えてみてください。社会発展は確実に進んでいます。これは専門家ではなくてもわかることです。ご自分でインターネットを使って調べるか、サウジアラビアに短期滞在するだけでも見て取れることです。現地人に聞いてみてください。約2,000万人のサウジアラビア人を含む、サウジアラビアに暮らす約3,300万人の現地人の誰に聞いても同じように言うでしょう。したがって、私たちは社会的に正しい方向に向かっています。最終的にアメリカの社会基準の100%に満たなくても、私たちは正しい方向に進んでいます。社会発展はアメリカの基準の70から80%といったところで着地するしょう。私の見解では、現在私たちは50%のところにおり、あと20から30%前進の余地があります。サウジアラビアならではの信念があるため、100%に達することはないでしょう。これは私自身の問題ではありません。これはサウジアラビアの人々の問題です。そして、サウジアラビアの信念と、一サウジアラビア国民である私自身の信念を尊重し、そのために戦うのが私の務めなのです。

アトランティック誌

女性の権利の問題について、殿下は米国人がサウジアラビアをもっと評価しないことに驚いているように見えることがあります。

皇太子 我が国は評価を得るためにやっているわけではないので、気にしません。サウジアラビア人として、自分たちのためにやっていることです。その努力を正しい視点から見ていただければ―まあ、ありがたくはありますが。目を向けるかどうかは、あなた次第です。

アトランティック誌

サウジアラビアの未来は、立憲君主制になるのでしょうか?

皇太子

いいえ、立憲君主制ではうまくいきません。サウジアラビアは純粋な君主制に基づいており、その下に複雑な君主制的構造があります。部族、都市、そして私が代表するサウジ王家ならびにサウジ国民が存在し、国王はこの構造のリーダーとして彼らの利益を保護しているのです。2,000万人のサウジアラビア人口のうち、サウジ国民の人口は1,300万人から1,400万人です。1,400万人の国民に対して、クーデターを起こすことはできません。

ジ・アトランティック

民主主義や立憲君主制という考え方には、魅力を感じたことはありますか?

皇太子

もちろん、それはあります。魅力的な考え方は数多くあります。民主主義も魅力的だし、立憲君主制も魅力的です。しかし、どれを採用するかは、場所とやり方、背景に依存します。米国の民主主義は興味深いです。世界最大のGDP達成への道を開き、偉大な国を作り、全世界に多くの素晴らしいものを提供してくれました。ただし、それは英国を追い出し、米国を統一するまで、独自の状況に基づいて設計・創立されたものなのです。政治体制、経済思想、社会的な信念は、自分たちに最適な方法で設計し、進化させていくものです。例えば、100年前の米国を振り返ってみると、当時の社会的な信念は馬鹿げたものに思えるでしょう。サウジアラビアの我々にとっても、馬鹿げたものだと思えます。しかし、信念は進化して変化しました。

サウジアラビアは、国王陛下が明日起きたら好き勝手に変えられるというような絶対王政ではありません。国家運営には正しい方法があり、憲法で三権分立を明記してます。行政府、これは総理大臣である陛下が主導します。しかし、他の二つは陛下自身が主導するのではなく、陛下が任命する人が主導します。制度やプロセス、手続きが存在しているのです。政策決定過程の例として、次のようなものがあります。私たちは、2015年に女性の運転を許可したいと考えました。しかし、2017年まで実現できませんでした。これは、私たちが国民の前で、憲法に従って仕事を遂行したことを示しています。もし、テントを張るように適当に国家を運営したら、経済全体が崩壊し、誰もサウジアラビアに投資しなくなり、サウジ国民ですら私たちを信じなくなることを意味します。適当に運営するわけにはいかないのです。そんなのは、リビアのカダフィのやり方です。

皇太子:

サウジ王家は、600年前、第2次ディリーヤよりも以前から、支配者一族として存在してきました。一族は300年前にサウジアラビアを樹立し、7年間崩壊して復帰し、10年間崩壊して復帰するといったことを繰り返してきました。ですから、私たちは多くの教訓を学んでいます。また、私たちは進化し、それとともに体制も進化してきました。それぞれの世代は、それぞれの三権分立の制度に基づいた体制で運営されています。新しい国王、新しい皇太子が即位したとしても、この制度的な支柱を弱体化させることはないでしょう。現在サウジアラビアがG20の一角を占め、世界の石油需要の12%を占め、世界第2位の石油確認埋蔵量を持ち、世界最大の政府系ファンドのうち二つを保有する国となれている理由は、過去300年の米国人と同様、それぞれの世代が過去世代の上に制度構築を続け、未来のために投資し、進化し続けることができたからなのです。

アトランティック誌

サウジ国民の中には、世代を重ねるごとに王族が増え、いずれは増えすぎて、王族の称号を失う人も出てくるのではないか、と言う人もいるそうです。その可能性はあると思いますか?

皇太子:

そう言っている人と話してください。

アトランティック誌

そう言う人たちの主張は存じています。

皇太子:サウジアラビアには、青い血は存在しません。我々王家は、国民に奉仕すべく存在しています。我々は国民の一部なのです。例えば、私の母は王家の出身ではありません。彼女は、アジュマーンやヤムなどを中心に全国に100万人近くいる部族の出身なんです。我々王室は、王室以外の人と結婚し、融合しています。また、我々王室はここに住み、ここで育ち、アラビア半島の一部となっているます。我々は有史以来、イスラム教が始まるよりも前から、バヌ・ハニファとして諸都市を治めてきました。そして、時期は不明ですが第一次ディリーヤを樹立し、600年前に第二次ディリーヤを樹立し、300年前にサウジアラビアを樹立しました。つまり、我々は国民の一部なのです。ですから、王族は国民に対して行使できる特別な権利を持っていません。王族がレッドラインを超えたら、サウジアラビアの他の人と同様に処罰されます。犯罪を犯せば、一般国民と同じように罰せられ、法律が適用されるのです。あなたが王族なら、それは尊敬すべき称号だという、ただそれだけのことです。

アトランティック誌

では、リッツカールトン事件の話をしましょう。これは、高級ホテルを刑務所に使ったということもあって、物議をかもしましたね。その一方で、グレームが面白いことを言ったんです。彼は、「刑務所を使うこともできたのに、高級ホテルを使ってしまった」と発言しました。

皇太子

そうです。リッツカールトンで起きたことは、逮捕ではなく、彼らに二つの選択肢を与えることでした。一つは、完全に法律に従って処遇すること。ですから、検察は告発のリストを作成していました。もう一つは、交渉の道です。その結果、ほぼ95%の人が交渉の道を選びました。つまり、その時点では彼らは犯罪者ではないので、刑務所に入れることはできませんでした。彼らは交渉のためリッツカールトンに滞在することに同意し、交渉を成立させたのです。確か、ほぼ90パーセントの交渉が終了していたと思います。残りの交渉を拒否した人たちは、サウジの法律に基づいて公訴しました.。そして、かなりの割合で、交渉や裁判を通じて、無実であることが証明されました。

アトランティック誌

つまり、リッツカールトンの役割は、ライバルを排除することではなかったのですね?

皇太子

リッツカールトンに詰め込んでまで排除する必要性があるようなライバルは、そもそも存在しません。そもそも何の力もない人をどうやって排除するのでしょうか。

純粋に、サウジアラビアにおける大問題を止めようとしているだけです。予算のうち、多くの割合が汚職に使われます。汚職が続けば、非石油GDPを5.6倍にすることも、2021年にサウジアラビアへの外国投資を50%増やすこともできませんし、正当な運営が行われていると信じていなければ、有能な大臣や重要人物に政府で昼夜問わず24時間働いてもらうことはできません。サウジアラビアが汚職にまみれていれば、そんなことは起こり得ません。

アトランティック誌

どのような経緯で、このようなことをお考えになったのでしょうか。

皇太子

考えたのは私じゃありません。2015年の初めにサルマン国王が出した要望のひとつが、「汚職をなくせ」でした。政府は、2015年から2017年にかけて書類を収集・準備し、最善の行動は何か議論を始めました。そして、陛下によって行動が起こされたのです。

アトランティック誌

これが役に立ったと考えますか?

皇太子

もちろんです。まず、強いシグナルとなりました。当時、サウジアラビアは大きなクジラ、つまり腐敗した大物だけを捕まえようとしているのだと考える人もいました。しかし、2019年から2020年にかけて、たとえ盗んだのが100ドルだけでも、その代償を払うことになると理解されたと思います。多くの人が、この間違いを犯しました。

アトランティック誌

ちょっとカタールの話しましょう。今の殿下の立場は、ほんの数カ月前とはずいぶん違っていますね。

皇太子

身内同士で喧嘩しているようなものです。

アトランティック誌

家族喧嘩ということですね。喧嘩は終わりましたか?

皇太子

間違いなく、兄弟喧嘩でした。そして、ご存じの通り、間違いなく、彼らは前進していき、私たちは最高の親友になっていくことでしょう。GCC諸国は、共通の政治体制を持っています。私たちは、だいたい90%くらいの場合で同じ政治的見解を有しています。安全保障上の危険も、経済的課題も、機会も、それに社会とその構造も共通しています。

だから、私たちはGCC諸国として一つの国のようなものであり、それがGCC設立し、協力する動機となっているのです―なぜなら、協力することで私たちの安全が保障され、経済計画の成功が保証され、政治課題の克服も成功するだろうからです。もちろん、いくつかの相違点はあります。私たちの役割は、利害関係を強化し、相違点を乗り越えることです。そして、それこそ二国間の歴史の中でずっと続いてきたことなのです。

アトランティック誌

サウジ国民の中には、これは一種の国家間冷戦だったと考える人もいます。彼らは、カタールに有利な発言をすれば、自分や家族に何が起こるかわからないと恐れていました。そうした人とって、突然、関係が修復されたかのような友好的態度は、どのように感じられるでしょうか。大きな変化ではないかと思うのですが。

皇太子

ネガティブな話はしたくありません。もう乗り越えたのですから。今日、我が国はカタールと信じられないほど素晴らしい関係を築いています。シェイク・タミームは素晴らしい人物で、かつ素晴らしい指導者です。他のGCC首脳も同様です。私たちの目的は、輝かしい未来を築くことです。そして、私たちは今、歴史上かつてないほど良好な関係にあります。

アトランティック誌

もう1つの大きな問題は、当然ながら、イランとの関係が良好だと考えているかどうかです。これは、イランはGCCには属していないので、身内の喧嘩ではありません。

皇太子

イランは隣人です。永遠の隣人です。私たちは彼らを追い出すことはできませんし、彼らも私たちを追い出すことはできません。ですから、お互いにとって、問題を解決して、共存できる方法を探した方が良いのです。これまで、4回にわたる交渉が行われました。イラン指導者の発言を聞きましたが、サウジアラビアはこれを歓迎しています。これから、我が国は交渉を継続し、細部を検討していく予定です。もしうまくいけば、両国にとって有益で、我が国とイランにとってより明るい未来を創り出せるような成果が得られるでしょう。

アトランティック誌

違う言い方で質問させていただきましょう。今は明らかにサウジアラビアにとって大きな将来への約束をもたらす時だと思いですが、同時に大変危険な時でもあるのでしょうか?

皇太子

どんな危険ですか?

アトランティック誌

政治不安の危険、権力断絶の危険。あなたの多くの側近の方々によると、皇太子が成功させられない場合は、アラブのイスラム首長が行うか、さもなければ大変な悲劇につながる可能性があるということですが。

皇太子

はい。確かに国王かつ私の義務は、それが国王や私個人の問題とならないようにすることです。我々はサウジアラビアに大幅な変化をもたらしました。各世代における過ちから学び、慎重に成り行きを見守りながら、同じ過ちは絶対に繰り返さないようにしてきました。何が起ころうとも、サウジアラビアにおけるプロジェクトは継続されなければなりません。また、王位継承は平和的に行われ、それが継続していく必要があります。過去100年を振り返っても、王位継承は平和的に行われてきました。国王が逝去すれば皇太子が国王となり、新たに皇太子が生まれ、国王が末長い生涯を送ることを願うのです。

アトランティック誌

私たちが話をしてきた人々は、もしビジョン2030がうまくいかなければ、サウジアラビアで地政学的な悲劇が起こるだろうと言っていますが、それは誇張なのでしょうか?

皇太子

それについてはなんとも申し上げられません。そういうことは考えたくありませんね。我々はとにかくいかに物事を推し進め、進展させ、結果を出すかということだけを考えたいと思っています。

アトランティック誌

Hayat al-Bay’aの忠誠の規律に変化があったようですが、ということは、アブドゥルアジーズのご子息たちが君主となった後は、皇太子が国王として同じ系列から出ることはできないということですね。

皇太子

その通りです。従って、例えば私はハーリドを皇太子に選ぶことはできないということです。

アトランティック誌

なるほど。あなたのお子さんたちも同様に?

皇太子

忠誠評議会の法により、別の系列から選ぶ必要があります。

アトランティック誌

その時が来たら、どのようにしてそれを決定するのですか?

皇太子

それについては絶対にここで話すことはできません。これは口外することが許されていない話題の一つであり、我々王族、つまり国王と私とHayat al-Bay’a の34人の家族の間だけで話をすることになっています。こうした話題については命にかけても口外はできません。

アトランティック誌

リッツ・カールトンの一件など、あなたが行ってきたような劇的な方法をとらずにこうした改革を実行する方法が他にあったと思いますか?つまり、少なくとも国民が公に異議を唱えるようなことにならないやり方で。もっとオープンでリベラルな方法で実施されることはできなかったのでしょうか?

皇太子

私のやってきたことをまたここで議論はしたくありませんが、我々がサウジアラビアで行ったことが唯一の実現方法

アトランティック誌

以前お話した時に、国の実情を把握する方法についてお話しいただき、ソーシャルメディアへの関心について言及されましたが、ツイッターやスナップチャットなどにどのくらい時間を費やしていますか?

皇太子

週末にはそれらを見ないようにしています。2009年から2018年の初頭ぐらいまでは、常にそれらをチェックしており、ほとんど週末に休みを取っていませんでした。2ヶ月に一度週末に休みが取れれば良い方でしたね。おかげで体重もすごく増えてしまい、しんどい思いをしていました。しかし2018年以降は週末に休暇を取るようにしました。国民や政府、その他すべての事がしっかりと安定してくると、計画性がうまれ、日々の業務も正常化しだしました。だから週末には休暇をするように切り替えてみたのです。もしそうしていなければ、今頃倒れていたでしょう。ウィークデーには一日中仕事をします。毎日ソーシャルメディアには10分、最大で20分ほど費やしています。

アトランティック誌

でも、ツイッターなどもご覧になりますよね?

皇太子

ツイッターもインスタグラムも、全て見ています。メディアチームには、私が自分について常に検索していることを是非知っておいていただきたいです。Apple ニュースも読んでいます。一つのアプリケーションにこれらすべての新聞記事をまとめるのですから大したものですよね。驚きです。大変ありがたいです。Appleニュースを読んでいるし、サウジアラビアや各国の新聞にも目を通しています。ソーシャルメディアには20分ぐらい、他のメディアには30分ぐらい費やしていることになりますね。大体は家族と朝食をとっている時に読んでいます。テレビとiPadと朝食がすべて同時進行状態です。家族と一緒に過ごしながら2つか3つの事を同時にこなします。ニュースを読んで、それらに目を通して–

アトランティック誌

どんなものをご観になるのですか?

皇太

映画やシリーズものなど、自分と別世界のものを観るようにしています。例えば「ハウス・オブ・カード」とか。

アトランティック誌

仕事をしている感覚でしょうか?

皇太子

観ているとやはり仕事の事を考え始めます。「ファウンデーション」は面白いですね。これは新しいシリーズものですが、本当にものすごく面白い。たとえば「ゲーム・オブ・スローンズ」なども良いですね。

アトランティック誌

「ゲーム・オブ・スローンズ」も若干仕事に近いでしょう。

皇太子

どちらかというとファンタジーというか、サイエンスフィクションですね。

アトランティック誌

「ゲーム・オブ・スローンズ」で好きな登場人物はいますか?

皇太子

いえ、特にいません。興味深い登場人物はたくさんいますけどね。彼らは皆非常に興味深い。だからあれほど面白い筋書きや議論ができるのでしょう。実に面白い。ただ、私が観たいと思うものは、現実離れしているようなものです。

アトランティック誌

どんな音楽を聴きますか?

皇太子

最近のアラブ音楽は好きではありません。中には良いものにありますが、大体は古い音楽の方が良いですね。それに色々な国の音楽を聴くのも好きです。

アトランティック誌

15年ぐらい前には考えられなかったような方法で欧米のエンターテイメントを楽しんでいらっしゃるようですね。

皇太子

それらは生活の一部でしょう。才能ある人々にサウジへ来てもらいたい、サウジの多才な人々に国にとどまってもらいたい、サウジの投資家たちに国にとどまってもらいたい、海外の投資家たちにサウジへ来てもらいたい、そして2030年には観光客1億人達成をしたいなら(実際2016年に600万人だった観光客が2019年には1,750万人近くまで増えています)、彼らにあらゆるソフトウェアとハードウェアを提要する必要があります。ソフトウェアはスポーツ、文化、音楽など、どんなイベントでも必要ですし、ハードウェアはホテルやテーマパークなどのプロジェクトに必要です。えり抜きの最高品質のものをもたらすことによって、観光・スポーツ・文化などの目標を確実に達成させなければなりません。2030年にはそれらがサウジの国民総生産の10〜15%に達するよう、必要なものは全て用意する必要があります。

アトランティック誌

宗教上の指導者たちは音楽に対して異を唱えていますか?

皇太子

はい、唱えています。音楽について議論を重ね、反論しています。ここでまたイスラムの教えに話を戻しますが、音楽はイスラム教では議論の対象となっているものなのです。イスラム教徒たちの間でも意見が分かれており、そのことは皆承知しています。イスラム教徒の間で意見が一致することであれば、必要に応じて制限の一部を排除する事ができるという規律がイスラムの経典に記されているのです。

アトランティック誌

必要性によって制限を排除できるのですか?

皇太子

はい、ですからもし私が失業率を低下させ、観光業によってサウジアラビアに100万の仕事を創出すれば、つまり、サウジアラビアから300億ドルが流出するのを防ぎ、その大半がサウジ国内にとどまるようにすれば、サウジアラビアの国民は以前ほど海外に出稼ぎに行く必要がなくなるので、私はそれを実現しなければならないのです。彼らはどちらにしてもサウジアラビアの外で仕事を探しに行きます。ですから我々としては3つ目の選択肢として、大きな罪よりは軽い罪を選ぶ、わけです。