湿度が上がり「ダニ」が繁殖しやすくなる梅雨の季節が近い。住環境で繁殖に適する条件が重なると、150万匹ものダニが発生することもあるという。そこで注意が必要なのが、ダニによる健康被害。アレルギー疾患の中で、アトピー性皮膚炎や小児ぜんそくの原因の一つとして挙げられる。室内にダニが繁殖しないために、効果的な対策が大切。日用品メーカーはダニの季節を前に、駆除剤を積極的に投入している。(山下絵梨)
【患者数急増】
ダニは、昆虫ではなくクモの仲間。室内にいるダニの8割が「ヒョウヒダニ」だ。0・3ミリ―0・4ミリメートルほどの大きさで、布団やぬいぐるみ、じゅうたんなどに多く発生する。人を刺すことはないが、人のフケやあか、食品カスなどを餌に繁殖する。ダニの死骸やふんを人が吸い込むと、ぜんそく、皮膚炎、鼻炎、結膜炎などのアレルギー疾患を引き起こす原因となる。
厚生労働省の調査によると、国内の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患にかかり、患者数は急速に増加している。ダニは気温25度C、湿度60%で急速に増える。近年、断熱性能を高めるため気密性を強化した住居などが増えたことも、ダニが室内にまん延する原因になっている。
【市場規模横ばい】
室内にダニが繁殖しないためにはどうすればいいのか。東京アレルギー・呼吸器疾患研究所の白井秀治環境アレルギー研究リーダーは「ダニを駆除することと、死骸やふんを取り除くこと。この2本柱が大切だ」と指摘する。駆除剤を使った後に、掃除機をかけて死骸などを取り除く対策を勧めている。
日用品メーカーはダニ駆除剤に力を入れている。薬局などで気軽に購入できるが、ダニ用商材の2016年の市場規模見込みは34億円と、この10年間はほぼ横ばい。アレルギー患者の急増に対して、市場の伸びは鈍い。この要因の一つに、ダニは目に見えないため対策意識が低いことや、ダニの知識が不足して駆除が遅れることなどが挙げられる。
【20―40代照準】
アース製薬は即効性や忌避効果などに優れる、ピレスロイド系のフェノトリンを有効成分とする「ダニアース」などを展開している。同社は新たに、年代別購入者率の割合が低い20―40代をメーン購入層に設定。この層に潜在需要があると見て、ダニ対策の特設サイトを開設し対策方法や製品訴求に取り組む。主な購入層の50―60代と併せて消費者の裾野を広げ「17年度に40億円の市場規模拡大を目指す」(マーケティング総合企画本部の渡辺優一ブランドマネージャー)。
フマキラーは「スプレータイプが好調」という。手軽さや、食品成分を使った安全性が支持されていると分析する。スプレータイプのダニよけ剤「ダニよけ トマトパワー」は、トマトに含まれる有効成分「ファルネシルアセトン」がダニを防ぐ。
ライオンのくん煙タイプの殺虫剤「バルサン」は、部屋の隅々まで殺虫成分が届き、隠れているダニの駆除に効果的としている。