【シリコンバレー=佐藤浩実】米マイクロソフトは24日、パソコン用基本ソフト(OS)の「Windows(ウィンドウズ) 11」を発表した。現行OSの提供開始から約6年ぶりの刷新で、ゲームを遊ぶための性能を高めたり「アンドロイド」向けのアプリを動かせるようにしたりした。2021年の年末商戦から一般提供を始める。
オンライン発表会で「11」の概要を披露した。目立ったのは仕事の効率向上につながる機能やゲーム愛好家向けの性能改良、アプリストアの刷新だ。
例えば、自社アプリ「チームズ」のビデオ会議などをOSから起動できるようにした。マイクのミュートや画面共有といった操作も可能になる。リモートワークの広がりで仕事に複数の端末を使う人が増えているため、直前にスマートフォンなどで利用した「Office365」のアプリをパソコンのスタートメニューに表示する機能も加えた。
ゲーム関連では、映像を鮮明にしたり、データの読み込みにかかる時間を短縮したりできるようにした。「Xbox」のゲームサービスとも連携させやすくする。このほか、米アマゾン・ドット・コムと手を組み、同社のストアを通じて購入した「アンドロイド」向けのアプリをウィンドウズ上で動かせるようにした。発表会では短編動画の投稿アプリ「TikTok」を再生する様子を紹介した。
ウィンドウズ11では、これまで左端の下にあったスタートボタンの位置を、中央に移すといったデザイン変更も実施する。マウスを動かす距離を短くして、操作性を高めるのが狙いだという。他社OSに追随し、天気や予定などをまとめた「ウィジェット」も使えるようにする。
OSの世代交代に合わせ、アプリを購入する「ストア」の刷新も表明した。手数料を取らない外部決済を認めて、新しいアプリを探す場所としての位置づけを強める。パソコンではもともとウェブサイトから直接ダウンロードする人が多いが、アプリ決済の硬直性をめぐって米アップルが競争法違反を問う裁判に直面するなかで、世論に配慮する姿勢を見せた。
マイクロソフトによれば現行OSである「ウィンドウズ10」の搭載端末は13億台にのぼり、一定条件を満たせば無償で「11」に更新できるようにする。同社は「10」のサポートを25年に終える方針で、今後数年をかけて企業や家庭での大規模な更新が進む見通しだ。ウィンドウズの売上高(20年6月期)は約223億ドルで、マイクロソフト全体の16%を占めた。
同社は継続的な更新を前提とする「10」の提供を始めた15年に「最後のウィンドウズになる」と説明していた。ただ大幅な刷新時は名前も変えるべきだとの議論があったという。サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は「ウィンドウズ11は単なるOSではなく、プラットフォームの作り手のためのプラットフォームだ」と述べた。
ウィンドウズ11の発表を受け、マイクロソフトの時価総額は24日に終値ベースで初めて2兆ドルを突破した。