まずは、ビジネス賞を受賞したチーム「株式会社ぐるなび DA」の発表内容から紹介しよう。ぐるなびのデータアドミニストレーター二人(宮澤 英智氏と中島 正統氏)のチームが掲げたテーマは「分析の業務経験ゼロでもできる!『Oracle Cloud』の機械学習で、飲食店の廃棄 ロスに挑む」だ。
チーム「株式会社ぐるなび DA」の宮澤 英智氏日本の外食産業で廃棄される食品は1年あたり120トン。ぐるなび DAではその原因の一つを「見込みの来客数や注文数に対する実績の下振れ」と捉え、ADWCとOracle Analytics Cloud(OAC)でどれほど高い予測精度を出せるかに取り組んだ。
採用したデータはカレンダーや気象情報、イベント情報などのオープンデータと、実店舗から収集して加工したサンプルデータ。最初に2017年の実績データをOACの機械学習モデルに学習させて「来店数」「注文数」の両予測モデルを作成。次に、2018年の天候データなどを基に年間の来店/注文予測を行い、結果を実績と突き合わせて評価した。
宮澤氏は「我々はデータ分析に関しては素人で、深い数式やモデルの知識はほとんどありません。実施した作業は、用意された学習モデルにデータを適応する程度です」と語るが、蓋を開ければ驚きの結果に。まず、来店者数では年間だけでなく週レベルの変動もほぼ正確に再現できた。
来店者数の予測(青)と実績(黄)。2つの線がほぼ重なり高い精度で予測できた一方、注文数に関しては季節性のないメニューAと季節性のあるメニューBの2つを用意。メニューAは高い精度で予測できたものの、メニューBは思わしくない結果に。その原因を調べたところ、気温データが正しく使われていなかったという。最初は最低気温、最高気温、平均気温の3つのデータを投入していたが、これを1つに絞ることで問題は解消。「料理の季節性の有無を問わず、通年でも満足のいく精度が出せました」(宮澤氏)。
メニューB(季節性あり)の予測(青)と実績(緑)。最初のモデル(左)では大きなズレが発生したが、気温データを正しく扱うように調整したモデル(右)は高い精度で予測ができている宮澤氏は「OACで生成した予測モデルに十分な妥当性が認められました」と強調。併せて「精度を高め、かつ実際に広く利用してもらうには、様々な飲食店の実績データの蓄積と、雨量や風速の予測など、よりきめ細かなデータも必要となります」と述べ、さらなる改善の余地を示した。
エンジニア賞を受賞した株式会社ぐるなび DAチームには、「JDMCエンジニアの会」のリーダーでもある東京海上日動システムズ株式会社の山田 文彦氏(右)からトロフィーと粗品が贈られた。写真左は今回裏方に徹した株式会社ぐるなびの中島 正統氏