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「情報I」の授業開始まで1年弱――高校の新しい「情報科」の授業に向けて今からできる準備とは?

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基調講演は「情報I・IIで大切なこと」と題し、京都精華大学教授の鹿野利春氏が行った。鹿野氏は、2021年3月まで、文部科学省で教科調査官として「情報科」を担当。新学習指導要領の策定にも中心的な立場で携わってきた。

講演では、具体的な内容に先がけ「情報I・II」の授業開始までのタイムテーブルが改めて示された。現行の「社会と情報」「情報の科学」で構成される「情報」の授業は今年度で終了。現在は「情報I・II」の研修と同時に、「情報I」教科書の採択が進められている。必履修科目である「情報I」の授業が開始されるのは2022年度。選択科目となる「情報II」の授業開始は2023年度だ。

鹿野氏は、今から来年度までに行っておくべきことして「研修」「授業準備」、そして「環境整備」を挙げた。

「利用する機器やツールなどの準備は今年度から進めておきたい。生徒のデバイスにインストールして使うツールであれば、その手順や権限などの確認が必要。近年では、デバイスにインストールしない、Web上にあるツールを利用するケースも増えているが、その場合でも、クラス全員が一斉にアクセスした場合に、校内のネットワークが対応できるかといったことについては、事前のリハーサルが必要だろう」(鹿野氏)

「情報I」のポイントは「現行の情報科+小中高での学習内容+α」

では「情報I」において、これまでと変わる部分はどこなのか。鹿野氏は「一部、新しい内容も含まれるが、今やっていることがまったく変わるわけではない。基本は現行の情報科の内容をしっかりとやること。それが情報Iの授業にも生きてくる」とした。

「情報I」の授業開始まで1年弱――高校の新しい「情報科」の授業に向けて今からできる準備とは?

情報Iにおける科目の目標は、生徒が「情報社会における問題の発見と解決」のためのスキルを身につけることであり、その「道具」として「情報デザイン」「プログラミング」「データ活用(統計的手法)」といった要素を活用できるようになることを求めている。ただし、その基本的な考え方は、小学校、中学校での学習で身につけてきた知識やスキルの延長線上にあるものだ。

とはいえ、「情報デザイン」という概念や方法論の理解と活用、そして小中学校よりも高度な「プログラミング」や「データ活用」の手法については、教員の知識、授業内容ともにアップデートが必要となる。特に「データ活用」については、数学Iや数学Bと関連する内容が多くなる。情報科の教諭は、関連する数学での学習内容を事前にある程度知っておくと同時に、学習時期についての確認、調整なども行っておく必要がある。

情報Iでの学習目標となる「情報社会における問題の発見と解決」を達成するにあたっては、そもそも社会の“問題”とは何なのか、それをどう見つけ出して“解決策”を講じればいいのかといった、より根本的な部分について、これまで以上に丁寧に理解する必要がある。鹿野氏は、このテーマを「問題の発見・解決」「法規・制度、情報セキュリティ、情報モラル」「情報技術が果たす役割と影響」といった副テーマに分けた上で、それぞれについての「理解」から一歩進み、「実践力」「対応力」「提案力」を育む学びが求められるとした。

「情報デザイン」の理解と実践が質の高い「学び」のカギに

「問題の発見と解決」を実践するための素養として、身につけるべきとされているのが「情報デザイン」への科学的な理解と、技法の実践だ。現行の情報科では、主に情報技術を使った表現や、グラフなどを用いたデータの視覚化といった、表現の「工夫」の部分に、重点が置かれている。情報Iの「情報デザイン」では、それをさらに発展させ「他者と、より効果的にコミュニケーションを行ったり、目的や意図を持った情報を受け手に対して、分かりやすく伝達したりするための技術」の習得が求められる。

「情報デザイン」は、いわゆる「見栄え」や「美しさ」の追求を指して使われる一般的な「デザイン」という言葉よりも幅の広い概念である。関連領域は、アクセシビリティ、ユーザビリティ、ユニバーサルデザイン、色や造形、論理性など多岐におよぶ。授業の中では、ポスターやWebページといった具体的なコンテンツ作成のほか、Webサイト、アプリケーション開発など、より多様な「ものづくり」と「コトづくり」の一体化した実践の中に「情報デザイン」の考え方を取り入れることができる。

プログラミング言語は「目的」に最もふさわしいものを選択する

もう一つのツールとなる「コンピュータとプログラミング」に関連して、現場の教師からの質問として多いのが「どの言語を使うべきか」というものだという。これについての鹿野氏の見解は「達成したい目的によって、その時点で最適なものを選択すべき」というものだ。

「例えば、“ものを切る”という目的を果たしたい場合、対象が紙であればハサミを使うし、木であればノコギリを使う。それと同じで、情報Iのプログラミングにおいても、どのような課題を、どのような形で解決したいのかによって、扱うべき言語や環境は変わってくる。目的のためにより良い道具が出てくれば、それを使っていくという意識が必要」(鹿野氏)

また近年では、授業の中で各種センサーやAIスピーカー、ロボットのようなIoTデバイスを使った実習も小中高を問わず関心を集めている。もし来年度の情報Iから、そのような取り組みを始めようと思った場合、機器を購入するための予算申請は今すぐ行っておく必要があるとした。