3月10日(木)18時0分 文春オンライン
“盗撮のカリスマ”斎藤果林容疑者が逮捕 犯行グループの一員が明かす“卑劣な手口”「若い女性が集まる連休にはグループで“温泉盗撮旅”へ」から続く
昨年12月、静岡県警が「盗撮のカリスマ」こと斎藤果林容疑者(49)らを逮捕した。立件された事件だけでも、盗撮現場は北海道、兵庫、神奈川と広範囲にわたっている。
取材班は斎藤容疑者と現場を共にした元グループのAと接触。「 #1 」で、絶対匿名を条件にAが語ったのは斎藤容疑者の“表の顔”と“裏の顔”だ。
そしてさらに取材を進めて浮かび上がってきたのは、複数人が集まって盗撮動画を鑑賞する卑劣な「オフ会」や「依頼盗撮」の実態だった——。(全2回の2回目/ 前編を読む )
茨城県にある日本百名山の1つ、筑波山。長閑な田園風景が続くこの土地の、とある宿泊施設の一室に夜、浴衣姿で寛ぐ5人ほどの男たちが集まっていた。ノートパソコンとテレビをHDケーブルでつなぐと映し出されたのは、バスケットボール部の女子学生たちの日常風景。次に映し出されたのは、彼女たちが露天風呂に浸かる姿を捉えた盗撮動画だったという。
Aはこう証言する。
「斎藤は馴染みの盗撮仲間や購入者たちを集めて、盗撮動画を持ち寄り“オフ会”を開いていました。クリスマスや年末年始などにメンバーが集まると、少し広めの部屋を予約し、その一室で開催するのです。
そこで流されていたのが、女子学生の動画です。某県内のとある温泉施設に、毎年春になるとバスケ部が合宿に来るのですが、斎藤はその入浴動画を撮影していました。更に女子学生個人のSNSを調べて日常の写真を入手する者もいれば、わざわざ練習風景や学園祭の様子を盗撮しにいく者もいます」
極めて悪質な犯罪行為。そして斎藤容疑者は定番スポットで待ち構えて撮るだけではない。自ら被写体になる女性をナンパし、手の込んだ盗撮をすることもあったようだ。
「女性に『温泉入ってきてレポートを書いてくれたら2〜3万円あげる』などと誘い、すぐに交渉を成立させます。この場合は、女性の個人情報をメンバーに晒したり、販売したりすることはありません。仲間に動画を共有する際には、その女性が映っている部分はカットします。単純にナンパして、その後盗撮する過程を個人的に楽しんでいたんだと思います。道で出会った人から、車を買ったディーラーのお姉さんまで、気に入った人には積極的に声をかけていました。
斎藤は一見、ただの気さくな田舎のおじさん。無職だと言う時もあれば、グラフィックデザイナーと名乗る時もあります。イケメンではないのですが、口がうまいというか、女性に手馴れているのです。
普通、見知らぬおじさんに声をかけられたら女性は警戒するじゃないですか。でも斎藤は、例えば某人気男性アイドルグループのメンバーと撮った写真を見せたりして、相手を信用させるのです。斎藤のナンパは何度か見たことがありますが、すぐに落としていましたね」
ちなみに斎藤と一緒に逮捕されたメンバーの1人は鹿児島県庁職員だった。“盗撮師”には本業のある人がほとんどだという。
「年齢は30〜50代ぐらいまで、私の知る限り全員が男です。妻子持ちの方が多く、大体は“趣味”。動画を販売する人はほとんどおらず、身内で交換して楽しんでいる人ばかり。メンバー同士で動画を交換すれば、手元にあった1つの動画が2つにも3つにも増えていく。それを求めて、グループに参加する人が多かったのだと思います」
こうした行為は卑劣極まりないが、盗撮は実際に撮る者だけの責任ではない。斎藤容疑者は、顧客から頼まれて個人的にデータを渡す「依頼盗撮」も行っていたのだという。
「例えば、客が『〇月〇日に〇で好きな娘の裸を撮って欲しい』と依頼するのです。男は女性を誘って温泉に行き、待ち構えている斎藤が撮るという流れです。客のなかには『美女と温泉旅行を楽しんできました!』と、温泉と食事の写真ばかりのブログ記事をあげている人もいますが、目的は盗撮。ネット上では『遠足』とか『ハイキング』とか隠語を使っている人も多いですが、ようは盗撮旅行のことです。
なかには『プロジェクト』と呼ばれる撮影もありました。複数人が金を持ち寄り、アイディアを出しあって特定の女性を誘い出して、依頼された斎藤が盗撮するんです。マイクロバスをチャーターして温泉に行き、撮影した話も聞きましたね。ただ、目当ての女性がドタキャンしたら台無しになるので、少人数でやることが今は多いようですが……。ちなみに大手広告代理店などにも人脈があり、お気に入りの有名女優を盗撮したと話していたこともあります。
また斎藤とは別ですが、企業の社長から『社員の裸を撮って欲しい』と依頼され、社員の温泉旅行や研修旅行の写真を撮ったというケースも聞いたことがあります。ちなみに依頼盗撮の場合は無料で、代わりにお礼としてプレゼントを斎藤に渡したり、斎藤が撮った販売用の動画を購入したりしていたようです」
販売の場合は、動画の送受信や金銭授受の履歴を残さないようにするため、ネットで出会った客でも必ず直接会い、現金で受け渡しをしていたという。客は、比較的安定した地位の者が多かったようだ。
「購入者は医者や大学教授など、口が堅そうで堅実な金持ちが多く、固定客も多い。客とはネットで出会うことが多かったと思いますが、“ナンパ”の場合もありました。飲みに行った席で1人の客に話しかけるなどして、反応によって購入や依頼盗撮を持ち掛けるのです。私も不思議ですが、30年という経験からか、『この人は動画を買う』というのが直感的にわかるらしく、斎藤のそうした嗅覚は異常でした」
こうした盗撮被害を免れるためには、どうすれば良いのだろうか。
「盗撮師たちが狙うのは出入りが激しい日帰り温泉入浴施設が多い。インスタ映えするなど若い女性が多く訪れ、正面に木々が剪定されていないような山がある施設は危ないです。また景観を損なうことにはなりますが、覆いがついた施設の利用をお勧めします。実際に過去、斎藤の盗撮被害があった施設が覆いをつけ、温泉旅の定番スポットから外れたこともありました」
自然の景観に魅せられ入浴する楽しみはあるが、盗撮被害の可能性は意外と身近にあることを心に留めて置くべきかもしれない。
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3月10日21時〜の「 文春オンラインTV 」では、本記事について担当記者が詳しく解説する。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))