最近、テレビのニュースなどで事件が報道される際、監査カメラの画像・映像と思われるものがよく流れる。また、街中を見ても監視カメラがあちこちについている事に気づく。玄関口に防犯カメラや人感センサー付きのライトをつけているご家庭も多いだろう。
上記のことから、日本人のセキュリティ意識が高まっている事が伺え、ビジネスの視点からみても、防犯・監視カメラ市場は成長をつづけており、2013年度には国内業者の売上累計が857億円(※1)で、前年比10%増加となっている。また、世界的にも需要は拡大傾向にあり、2014年の世界市場規模は出荷台数ベースで前年比110.9%となる2545万台(※2)、金額ベースでは1.5兆円(※3)で、これが2018年には4320万台、2.5兆円まで拡大すると予測されている。※1) 帝国データバンク 2015/3/19 防犯・監視カメラ関連業者158社の経営実態調査より※2) 矢野経済研究所 監視カメラ世界市場に関する調査結果 2015 より※3) キャノン株式会社 2015年3月9日発表の経営方針説明会資料より
そんななか、格安で高クオリティーな防犯カメラ・サービスを引っ提げて登場したのが、今回紹介するセーフィー株式会社。防犯カメラ業界に革新的イノベーションを起こしそうなベンチャーだ。
同社では「Safie」というブランド名で防犯カメラ・サービスを2015年1月19日から予約販売、3月30日にはAmazon開始での販売も開始した。
最大の売りはコストパフォーマンス。同社ではプロ用の仕様を超えるサービスを10分の1のコストで提供している。
対応カメラ「QBiC CLOUD CC-1」は19,800円(税別)で、Safie サービスの利用料は月額980円(税別)。ちなみに同性能の防犯カメラをセキュリティ会社と契約しようとすると、大手だと月額費用は5000円以上、初期費用の合計が50万円以上する事もあるという。それと比べると、いかに同社が圧倒的なコストパフォーマンスを達成しているかがおわかりだろう。ちなみに、サービス初回登録で最初の2週間は無料で使える。
性能も同サービスのポイント。400万画素CMOSを搭載したカメラで、HD動画が7日間自動保存される。保存されたデータはクラウドで管理され、スマホなどから見る事ができる。もちろんライブで見る事もできるほか、遠隔でズームしたり、画像を回転させたり角度調整も可能。セキュリティ面でも、世界最高水準の暗号化通信技術を採用している。
設置にはカメラのほか、スマホとWi-Fi環境があればすぐに使える。スマホに専用アプリをインストールし、Safieのサーバにつないで設定するだけ。ちなみに録画機能を使わなければ、月額費用は不要だ。
また、防犯カメラという事で、撮影範囲は対角170度と超広角で、通常のカメラと比べて広い視野で録画してくれる。赤外線ナイトビジョンを搭載し夜間での利用に対応、防水仕様なので当然だが屋外でも使える。さらにHD録画はもとより、動体・サウンド検知と自動アラーム機能もついており、カメラの前を通る通行人や車の動きを察知して、その履歴を残してくれる。
同社ではコンシューマー向けモデルのほかに、B2Bのセキュリティーニーズにも対応した「Safie for PRO」というリースプランも展開している。これはマンションやビル管理、公共施設などへの導入を想定したもので、対応カメラ4台に7日間HD録画機能がついて月額11000円とリーズナブル。設置にあたっては工事費なども不要だ。
同社代表の佐渡島 隆平氏によれば、売上は非公開だが、2015年内には1万台を目標にしている。
セーフィー株式会社の創業チームは、PS2のグラフィックチップス、シーモスセンサなど、ソニーの画像処理技術を一手に手がけてきたソニー木原研究所を継承し2007年に設立されたモーションポートレート社の出身のエンジニア3名からなる。
モーションポートレート社は「モーションポート」という、1枚の顔写真から各部位の形状を自動でピックアップし、精巧な3Dに仕立てるCG技術のライセンス事業を推進。その中で、ライセンスだけではなく、ソニーが持つ半導体やクラウドコンピューティング、人工知能開発技術など、先進先鋭のテクノロジーを活用して、IoTサービスを開発できないかといった機運が高まっていった。
そうしたなか、セーフィー社の代表取締役社長である佐渡島 隆平氏が、Safieのビジネスアイデアを思いついたのは、新居の購入がきっかけだった。新居に合わせて防犯カメラも設置しようと見積もりをとってみた所、カメラ2台設置するだけでも数十万円もの費用がかかる事がわかった。しかも、カメラスペックは30万画素程度で静止画像。ここに違和感を感じた佐渡島氏は、同業界にビジネスチャンスがあるのではないかと興味を持った。
そうして調べていくうちに、ガラケー登場時並みの低画質に加えて、暗号化もされてない脆弱なセキュリティーシステム、防犯カメラごとに個別のシステムが組まれ、データはローカル保存など、さまざまな問題点があることを知った。これならモーションポートレート社で培った画像処理やクラウド技術を用いれば、もっと安く高品質なサービスを提供できると考えて、Safieのビジネスモデルに至った。
佐渡島氏は早速このアイデアをプロジェクト化した。ソニーに限られず、あらゆるデバイスをつなげるプラットフォームを志向するため、独立を決断。同僚であったエンジニアの森本 数馬氏、下崎 守朗氏とともに、2014年10月にセーフィー株式会社を設立した。その後、So-netなどからの出資を受けた。
ちなみに、共同創業者の下崎氏はソニー木原研究所出身で、画像処理のプロフェッショナル。セーフィー社では、メーカに配布するためのカメラのソフトウェアモジュールや、画像処理を応用した人工知能技術に取り組んでいる。また、森本氏はソニー在籍時代に『Google TV』のセキュリティ開発を担当し、セーフィー社ではクラウドプラットフォームの開発を担当している。
佐渡島氏の今後の展望を伺った。同社では現在、5種類のカメラを開発中であり、防犯以外のカテゴリへの進出も計画している。ドライブレコーダー、自販機、ドアホンのセンサーなど、また防犯・管理だけではなく、保育園や介護施設でのヒヤリハット防止、学習塾のリモート授業、はたまた自治体の防災まで、さまざまな業界での用途が考えられる。
同社の目指すところは、誰もが見たいものを手軽に見ることができるプラットフォームの提供。そのためには、カメラ産業自体にイノベーションを起こすことが必要で、そのためパートナー会社にソフトウェアモジュールを無償で提供している。
これまで製造はメーカ、サービスはサービス会社という垣根があった。しかし、Safieでは、ソフトウェアモジュールをインストールするだけで、メーカはサービス・プロバイダにもなることができる。
こうした取り組みが浸透していけば、サービスプロバイダが増加し、市場自体が拡大していく。防犯・監視カメラのみで言えば国内事象は数百億円規模だが、セーフィー社はもっと大きな潜在的市場を視野に入れて事業を展開している。
セーフィー株式会社 | |
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代表者:佐渡島 隆平氏 | 設立:2014年10月 |
URL:https://Safie.link/ | スタッフ数: |
事業内容:・クラウド型カメラセキュリティプラットフォーム・『Safie』の運営・ハードウェアメーカへのソリューション提供 |
当記事の内容は 2015/10/8 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。