• |
  • ブログ

  • |
  • 特別支援の教員と医師が、ICTで...

特別支援の教員と医師が、ICTで学びを支援するアクセシビリティを紹介!

書かれた 沿って notbook

第11回 EdTezhZineオンラインセミナー「特別支援教育でのICT活用──学びを支援するアクセシビリティとは」

相川 いずみ[著]

テクノロジーの発達により、パソコンやスマートフォン、タブレットとアプリなどの組み合わせによって、障害のある人々をサポートするさまざまなサービスが登場している。これらは障害のある子どもの学びや体験においても非常に有効だ。11回目となるEdTechZineオンラインセミナーでは、特別支援教育の現場に携わっている、埼玉県立特別支援学校さいたま桜高等学園の関口あさか教諭と、医師の三宅琢氏のお2人に、それぞれの立場と経験から「学びを支援するアクセシビリティ」をテーマにお話しいただいた。本稿では、実践事例をもとに学校や家庭でもすぐに取り入れることができるMicrosoftとAppleのテクノロジーを活用したツールや機能を紹介する。

  • 苦手をICTで代替し、学習効果やモチベーションをアップ

    「11年前から、さまざまな障害のある子どもたちへの教育でICTを活用し、学習支援を行っている」と話す関口あさか氏は、2015年から毎年「マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)」にも認定されており、長らく教育現場のICT活用に尽力してきた。さらに、学校や地域、校種を越えた教員コミュニティMIEE Talks@Admin.の代表として、全国の教員とICT活用の場を広げる活動を行っている。講演では主にMicrosoftのテクノロジーを活用した学習支援が紹介された。

    関口氏は「困難なことやできないことを健常者と同じようになるまで努力させて克服させるのではなく、自分の好きなことや得意なことを伸ばして、自信や自己肯定感を高めることの大切さ」や「苦手なところをICTで補うことや代替することの大切さ」について語り、過去の事例や有効なツールを紹介した。

    まず紹介されたのは、スポーツは得意だが勉強が大嫌いという中学1年生の男子の事例だ。関口教諭は校外での活動として、地域の子どもたちへの学習支援を週末に行っており、そこで出会った1人だという。

    この生徒が勉強を苦手と感じる原因を探ってみたところ「書くこと」と「読むこと」、特に英文を読むことについて困難さを感じていることが明らかになった。「英語では『正しく書く・読む』ことばかりに重きを置くと、その先の、英語を学ぶ上で身に付けたい読解力や表現力の学びに、いつまでたってもたどりつかないということが起こり得る。そして、学習そのものが遅れてしまう結果にもつながる」と、関口教諭は警告する。

    そこで、苦手意識のある「書くこと」と「英文を読むこと」を、パソコンと「Microsoft OneNote」で代替する学習を始めた。

    OneNoteは共有機能のほか、キーボードでのテキスト挿入、タッチペンなどによる手書き入力、PDFの貼り付け、音声録音、画像やリンクの貼り付け、WordやExcelデータの差し込みといった多彩な機能を持つ。

    関口教諭は「紙ベースで起きがちな紛失事件もなく、教材やテストをすべて1つのノート上にまとめることができる」とメリットを説明する。また、テキストを音声で読み上げたり、表示された文字を読みやすくしたりする「イマーシブ リーダー」の英文読み上げ機能も活用された。

    この生徒の場合は、英語の勉強自体への抵抗が強かったため、毎日10問だけ課題を取り組むところからスタート。すると「書く」よりも生徒本人が楽だと感じた「キーボード入力」によって問題へ取り組むハードルが下がり、以前は宿題や家庭学習をほとんどしなかったが、毎日継続して宿題に取り組むようになったという。さらに「もっと問題を出してほしい」と、要望を出すまでに変わっていった。

    特別支援の教員と医師が、ICTで学びを支援するアクセシビリティを紹介!

    「当初、鉛筆と紙を用いた学習では20分と集中が持たなかったが、パソコンを活用することで1時間以上集中して取り込むことができるようになった」と、関口教諭は振り返る。その後、この生徒はテストで高得点を取ることができるようになり、第一志望の高校に合格するに至った。

    この事例を通して、関口教諭は「『勉強が面倒』と話す背景には、わかりにくさや、一般的な学び方が本人に合っていない可能性があることがわかった」と語る。

    さらに「本人が負担に感じているものをICTに置き換えて、本来つけさせたい力に焦点を当て、学びを再構築していくことで、学びの保障ができる」とし、OneNoteが学びを支える強力なツールになったことを伝えた。なお、この事例は数年前のものだったため「現在であればTeamsを使って行いたい」と補足した。

    Windowsのアクセシビリティ機能を有効に活用する

    そのほか、マイクロソフトが無償提供している「PowerPoint」を使った漢字教材や、関口教諭らが作成したオリジナル絵本がつくれる「デジタルパワポ絵本」も紹介された。関口教諭によると「特別支援学校では絵本を題材にした授業が行われるが、大型テレビやプロジェクターに大きく映しだして、PowerPointなどで動かしたり音声が鳴ったりする絵本は、特に喜ばれる印象がある」という。

    関口教諭は「Windows 11」に搭載されている最新のアクセシビリティ機能を紹介。読み上げの機能はもちろん、音声認識はテキスト入力だけでなくPCの操作も可能で「Officeをはじめとしたアプリケーションや、Webでの検索も音声で入力することができ、非常に便利」と解説した。これらの機能の詳細は、マイクロソフトのWebサイトでガイドブックとして公開されている。

    知的障害がある子どもや、英語への苦手意識が強い子ども向けの「イラスト英文法教材」

    最後に、関口教諭は信州大学准教授の有路憲一氏と10年以上前から取り組んでいるイラストやイメージを使った英語教材について紹介した。

    この教材は暗記することや読み書きが苦手な子が英語をより学びやすくするために作成されたものだ。前置詞や助動詞などが持つイメージをイラストやアニメーションで可視化し、英単語の意味をただ暗記するのではなく、イメージや感覚で捉えていく。下図のように「前置詞のonは『~の上に』とただ暗記するのではなく『くっついている』ととらえるとよい」と例示した。困難さのある子どもだけでなく、大人の英語の学び直しとしても活用できるという。一部の教材はコラムとして公開されている。

    次のページ現役の眼科医が視覚障害に役立つツールを紹介

    NEXT

    この記事は参考になりましたか?

    この記事をシェア

    EdTechZine(エドテックジン)edtechzine.jphttps://edtechzine.jp/lib/img/cmn/fb_logo.png https://edtechzine.jp/article/detail/70962022/03/18 18:19