今のIT業界で最も重要なのは人材だ。どのようにチームを運営し、スタッフのモチベーションを理解し、賢い人材が効果的に仕事をして最善の判断が下せるようにするのか。そして、組織のパフォーマンスに巨大な影響を与えることができるクリエイティブな人々の集団を、どのように統率するかが重要になっている。
しかし、ITの分野で働く人たちに関するビジョンが変化していることを把握できていない経営者もいる。これは特に、これまでITを配管工事のようなものだと考えていた企業に多い。必要ではあるが仕事の中核ではないし、刺激的な仕事でもないと考えているのだ。
ITの世界はこの10年ほどで大きく変わった。一般的なIT部門で働く人の総数はあまり変わっていないかもしれないが、チームの構成は劇的に変わっている。
かつては、重要なのはハードウェアだった。多くの組織では、自分たちが必要とする技術のほとんどを自分たちで運用していた。その頃は、電子メールサーバーやウェブサーバー用などをはじめとするあらゆるハードウェアが自前のデータセンターや地下室に設置されており、エンジニア部隊がそれらの機材の面倒を見ていた。
しかしご存じの通り、クラウドコンピューティングの登場によって、こうした状況は一変した。企業のデータセンターは縮小し続けているし、財務システムやその他のシステムを自前で構築することに意味を見出している企業は減り、クラウドサービス事業者から購入する方がよいと考えるようになっている。
この変化を受けて、IT部門のあり方も変わった。現在のIT部門では、ビジネスで競合他社に先行し、成功をもたらすブレークスルーを起こすことが重視されている。これは、最高情報責任者(CIO)やその他のIT担当役員にとって、優れた人材を活用する能力や、ビジネスの成果を出せるようにチームを運営することが極めて重要になっていることを意味する。
しかし、開発者やセキュリティ専門家などのITの分野で働く人材に対する需要は高く、これらの人材は場所を問わずに働く能力も優れているため(ノートPCを持ち、移動先でも仕事ができるだろう)、IT業界は不可避的に、現在起こっている働き方の変化から影響を受ける最初の業界の1つになっている。
特にこの18カ月間で、リモートワークは多くのオフィスワーカーにとって当たり前の選択肢になっており、たとえ上司側がまたスタッフをオフィスのデスクで働かせたいと思っても、従業員の側は現状を変えたがらない。
どちらの側の主張にも説得力がある。在宅勤務の効率がよいことは明白だが、問題解決を行うためには、実際にチームが集まることにメリットがあるのも明らかだ。
しかし現時点では、従業員と経営陣はまったくの逆方向に向かっているように見える。ある調査では、ITワーカーの4分の3は、リモートワークは重要な権利であり、もし企業がそれを提供しないのであれば、転職するかもしれないと述べている。それを聞いて経営者が心配になるのも無理はない。それらの優秀な人材がいなければ、ソフトウェアやハードウェアがあってもあまり意味をなさなくなる可能性があるからだ。
業界によって展開されるシナリオは違うだろうが、この状況はIT業界が大きく変化したことを物語っている。もはやIT業界では、ソフトウェアやハードウェアではなく人材がもっとも重要なものになっているのだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。