• |
  • 記事

  • |
  • サムスン、スマホ折り畳みに活路...

サムスン、スマホ折り畳みに活路 大画面モデルは見送り

書かれた 沿って notbook

【ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子がスマートフォンの端末デザインを多様化させる。旗艦モデル「ギャラクシーノート」の発売を休止する一方、折り畳み型2機種を投入。巻き取り可能なディスプレーの新機種も開発する。中国の小米(シャオミ)などが急成長するなか、独自技術によりデザインを刷新した新機種で対抗する。

サムスンが8日発表した2021年7~9月期の連結営業利益は前年同期比28%増の15兆8000億ウォン(約1兆4800億円)だった。売上高は同9%増の73兆ウォンで、四半期として過去最高を更新した。部門別の業績は明らかにしていないが、有進投資証券によると半導体部門が増収増益をけん引した。

各部門のなかで事前予測と比べ健闘したのがスマホ部門だ。サムスンは春先に「ギャラクシーSシリーズ」、夏に「ギャラクシーノートシリーズ」と年2回、旗艦モデルを発表してきた。ノートシリーズ(画面サイズ6.7インチと6.9インチ)については、大画面化しているSシリーズとの違いを訴えるのが難しくなり21年は発売を休止。7~9月期業績への影響が注目されていた。

ノート不在を補ったのが、8月に同時発売した折り畳み型スマホ「ギャラクシーZフォールド3」と「ギャラクシーZフリップ3」の2機種だ。

若い女性に人気

「20~30代の女性を中心に大きな反響を呼んでいる」。サムスンは6日、両機種の韓国内での販売台数があわせて100万台に達したと発表した。2機種合計ながら発売後1カ月あまりでの100万台突破は、サムスンの数ある機種の中で3番目の高水準という。

広げたときの画面サイズはそれぞれ7.6インチ、6.7インチで、折り畳めば画面サイズに比べ小型化できる点などが評価されたようだ。

サムスン、スマホ折り畳みに活路 大画面モデルは見送り

製品発表時にスマホ部門トップの盧泰文(ノ・テムン)社長は「折り畳み型スマホの大衆化」を掲げ、フリップ3では従来モデル比28%安い1000ドル(約11万円)を下回る販売価格を設定した。ファッションに敏感な消費者を狙ってカラーも7色用意した。

フリップ3は欧米市場でも人気が出ており、SK証券は年内に世界で800万台の出荷を見込む。サムスンの年間スマホ出荷台数(2億5000万台)に占める比率は少ないものの、盧社長は「革新技術を集約したZシリーズでスマホの新たなカテゴリーを切り開く」と意気込む。

香港の調査会社カウンターポイントは今年の折り畳み型スマホの販売台数を前年比3倍の900万台と試算する。米調査会社のDSCCは、米アップルの折り畳み型参入を前提に25年には21年見込みの6.4倍の6600万台規模になると予測する。

スマホ用ディスプレーで世界首位でもあるサムスンは「折り畳みの次」も準備する。今夏には「ギャラクシーZロール」という商標登録を韓国や欧米で申請したことが明らかになった。巻き取り型の伸縮ディスプレーを指すとみられ、ディスプレー技術をもとに画一的だったスマホデザインを大幅に変える。

スマホのデザイン刷新に活路を見いだす背景には、中国勢の猛追がある。米国の規制によって華為技術(ファーウェイ)は失速したものの、小米やOPPO(オッポ)などが中国やインド、新興国でシェアを伸ばしている。カウンターポイントの月次シェアで6月には初めて小米がサムスンを追い抜いて世界首位に立った。

さらに収益面では高価格機種に特化するアップルに引き離されている。端末と基本ソフト(OS)、アプリで消費者を囲い込むアップルに対し、サムスンは端末の魅力を高め続けなければ背後に迫る中国勢を引き離せないとの危機感がある。

折り畳み型スマホはディスプレー自体を折り曲げる技術力が欠かせない。180度近く折り曲げられる極薄ガラスの加工技術や、耐久性が高い発光材料などサムスンの研究開発力が生きる。

小米や華為技術など中国勢も折り畳み型を発売したが「(技術力の差により)良品率は低く、収益化には時間がかかる」(証券アナリスト)とされる。

サムスンは半導体やディスプレーも自前で手掛ける。競合が半導体の調達に苦労するなかでも影響は比較的少ない。高い技術力と調達力を最終製品の革新にもつなげ、ライバルとの競争に備える。

アプリ対応がカギ

今後の折り畳み型の普及を加速させるには、端末の形状をいかせるアプリの拡充がカギとなる。オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」のアプリは、スマホ画面を90度起こすとビデオ通話しやすいように画面レイアウトが自動的に切り替わる。ただこうしたアプリはまだ一部に限られている。

サムスンは折り畳み型で使いやすいアプリを開発するために米グーグルと米マイクロソフトなどと連携している。今後は利用者が多いSNS(交流サイト)やゲームなどでも端末の特性をいかした機能や操作性を充実させることが、折り畳み型がスマホ市場で根付くための条件となる。