きっかけは今年の2月に行なわれた「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD the AWARD」だった。このイベントは、「攻殻機動隊」の世界で使われている未来のテクノロジーを産・官・学で実現しようというプロジェクトで、特にこのイベントで研究者達が、「攻殻機動隊」が提示する未来世界が、自分たちの研究のテーマとしてどのように実現されつつあるかを語る「攻殻ユニバーシティ」は特にワクワクさせられた。
東京大学先端科学技術研究センター教授の稲見昌彦氏この中で筆者の興味を特に惹いたのが東京大学先端科学技術研究センター教授の稲見昌彦氏である。稲見氏は「攻殻機動隊」をヒントに背景に溶け込むことができる「光学迷彩」を実現、人間の能力を“拡張”する「人間拡張工学」を専門とし、様々な研究を行なっている。昨今では現代のテクノロジーを応用しより多くの人が、より大きなスケールで人間の能力を発揮できる新しいスポーツ「超人スポーツ」にも取り組んでいる。
筆者は稲見氏の著書「スーパーヒューマン誕生」を読んで、その幅広いアプローチと、現在の技術を発展させた上での“人類の未来”に非常に魅了された。「スーパーヒューマン誕生」では、「サイボーグ」、「VR」、「人型ロボット」などの多彩なテーマに対し、現代のテクノロジーがどのようにアプローチしているかを説明している。
本には「攻殻機動隊」に限らず、「ドラえもん」、「ワンピース」などのコミックスやアニメ、Wii、Kinect、そしてPlayStation VRといったゲーム機や様々なゲームソフトも出てきて、読みやすく、イメージしやすいテクノロジー解説の「入門書」としてぴったりの本になっている。本を読むことで稲見氏はかなりのゲーマーであることも感じ取れる。稲見氏の取り組みや今後考えていることを聞き、ゲームや、エンターテイメントの“未来”を聞いてみたいと強く思った。
稲見氏はゲームの理解も深い。今回はVRから「HoloLens」の話まで飛び出した。コンピューターの発展、情報化社会の発展を私たちゲーマーは1番感じているかもしれない。グラフィックスなどの演出面の発展だけでなく、オンラインでのコミュニケーション、スマホでの新しいゲーム体験、WiiやKinectの身体を使ったゲームプレイ、そしてPS VRでのさらなる没入感……テクノロジーの最先端にいる研究者である稲見氏はこういった現状をどう捉え、どのような未来を見ているのか? 今回は様々な方向からの質問をぶつけてみた。
【攻殻ユニバーシティ】攻殻ユニバーシティでの稲見氏の発表。稲見氏は「攻殻機動隊」をヒントに背景に溶け込むことができる「光学迷彩」を実現した現在は「人間拡張工学」を応用した「超人スポーツ」に取り組んでいる