Release 2の認定機器であるが、Release 1の1409に対し、わずか119しかない。というのもRelease 2の発表当時にWi-Fi Allianceでは、Release 1からRelease 2へのCertification(認証)切り替えを、半年後の2015年4月からとすることを計画。そこからは若干遅れたものの、現在ではRelease 2相当のCertificationが実施されている。ということは、それ以降に3年以上の間に認定を取得した機器が、わずか119しかないということになる。
この理由は、ホットスポットを取り巻く状況が大幅に変化したことと言える。2012年当時といえば、ようやくLTEの商用サービスが開始されたばかりで、まだ回線速度もそれほど高速ではなく、低速な3.5Gこそ広く利用可能だったが、LTEはまだ繋がりにくかった。
このため当時は、LTE網に繋ぐよりも、ホットスポットへ繋いだほうが高速というシーンが圧倒的に多かった。基地局の整備に時間がかかることもあり、キャリア各社は、特にLTEのオフロード先としてWi-Fiを提供することに熱心であった。これが、Passpoint Release 1が広く使われた理由だと考えられる。
ところが2015年になると、LTE回線向け基地局の設置や、混雑する場所への増強も一段落して、そろそろCA(キャリアアグリゲーション)をサポートするLTE-Advancedのサービスも始まりつつあった。この時期、キャリア各社は、むしろ自社のLTE/Advanced LTE回線の利用拡大に注力しており、Wi-Fiホットスポットの充実は、完全に後回しになってしまった。
しかも、混雑した場所でのアクセス改善に効果的な「IEEE 802.11ac wave2」の対応機器が出回り始めたのは、やや遅れた2016年からだった。もう少し早くリリースされていれば、公共の場所におけるホットスポット普及に今よりは勢いが付いたのかもしれないが、実際には「ホットスポットは携帯電話回線より遅い」という状況がこの前後に定着し始め、その後、格差はさらに広がることになる。
加えて日本の場合、現在のところ5GHz帯の屋外利用はW56(5150M~5250MHz)に限られているため、屋内での利用はともかく、商店街や公園などでその性能が生きるIEEE 802.11acのメリットを享受しにくく、混雑が解消しにくそうな状況が当面は続く見込みだ。となると、繋ぎやすい2.4GHz帯でということになるが、こちらはLTEに比べて明らかに性能が低い。
厳密には国ごとに違いがあるものの、基本的に欧米では5GHz帯が屋外でも使える分マシなのだが、「誰もがホットスポットを使う」というよりも、「通常は携帯電話回線を使い、何らかの理由で携帯回線を使えないときにホットスポットを使う」というように変わりつつある。少なくともWi-Fi Allianceが描いていたほどには、広範にホットスポットが必要とはされていないという状況だ。
こうしたあたりが、このRelease 2が不発となった理由ではないかと思われる。ちなみに、前回の最後でも書いたが、Release 3は、当初2015年に予定されていたものの、その後音沙汰がなくなってしまっているのも、Release 2を取り巻く状況を鑑みて、ということではないかと思われる。